危険運転ラッパーWaxのTwo Wheels

アメリカのラッパーWaxはミドル・テンポの佳曲「Two Wheels」で気負いなく自転車を歌う。ロサンジェルス在住らしくビーチ・クルーザーに乗り、閑静な住宅地の広い道路を通り抜ける。青い空の下、サーフ・ボードならぬギターを背に抱えてスタジオに向かい、途中で出会った子犬を可愛がる。荒廃したシャッター街を歩き、ヴェニス・ビーチの砂浜で一人ギターを掻き鳴らして歌う。

途中でプール・サイドのパーティに立ち寄り、乱痴気騒ぎにグラスを渡されて一気に呷る。パーティのグラスだから、お酒? そうWaxは酒好きでもあるらしい。アメリカでは飲酒運転の基準が低く、軽く一杯ひっかけた程度なら許容される。それでも「死ぬまで飲み続ける」ほどの酩酊状態なら逮捕だろうし、そもそも危険極まりない。運転免許を剥奪されてもプライドがあると歌う。一体何のプライド?

I’m gonna sing oh yeah, oh-my-my
I don’t give a fuck about a DUI
You can take away my license
But you can’t take away my pride
I’m singing oh yeah, oh-my-my
I’m a keep drinking until the day I die
Two wheels is the way I ride

Wax “Two Wheels”

僕は歌うよ、オーマイマイ
飲酒運転で逮捕されても気にしない
運転免許は取り上げられるだろうが
僕のプライドまでは取り上げられない
僕は歌っているよ、オーマイマイ
死ぬまで飲み続けるのさ
二輪こそが僕が乗る方法

Wax “Two Wheels”(筆者による訳詞)

一見一聴しただけでは優男のラッパー兼脳天気な自転車野郎と思えたWaxは、かくして反骨精神溢れるアルコール依存症の反骨男だと分かる。本稿も飲酒運転を薦めるわけではない。個人的には禁酒法が施行されても何も困らない。もちろん、作品が実体験に基づくとは限らないし、作品の価値と作者の人格は別だ。ただ、もうひとつのWaxの自転車曲「Bike Rap」のビデオを見れば、やれやれと思うだろう。ヘッドフォンをして自転車に乗ることもまた危険極まりない。

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