自転車にとって人間はエンジンだ。一人の人間が生み出せる瞬間の力は約0.5馬力、持続して発揮できるのは約0.1馬力だ。この非力なエンジンを使用している自転車はモビリティとして非常に優秀と言えるだろう。自転車誕生以来、人々は非力な人間の力をどのように補助するかを考えてきた。
現在、補助動力で主流なのはモーターを使用した電動アシストだが、自転車の補助動力として最初に用いられたのは蒸気エンジンだ。1868年フランスで開発されたミショー・ペロー蒸気ペロシペデが補助動力を備えた最初の自転車と言われている。自転車というより現代の括りだとオートバイに近い。実際この自転車にエンジンを備え付ける流れの中でオートバイが誕生した。
モーターを補助動力に採用した自転車が世に出たのは1897年、そこから100年以上の歳月を経て、現在の形態の電動アシスト自転車であるハイブリッド自転車(PAS Power Assist System パス)を1993年にヤマハ発動機が発売した。これまで出力パワーに関わらず、動力がついた自転車は全て原動機付自転車と法律上定められていたものをヤマハが自走できず人の力を補うための原動機しかつていないため、自転車として成立すると主張し、原付ではなく自転車として発売した。
多様な自転車の補助動力
自転車の補助動力は二種類に分けられる。電気や水素などのモビリティの動力として利用されているものを補助動力にするものと他のモビリティにはないペダリングという乗り手の足の動きを利用して補助動力として成り立つもの。
ヤマハは人に優しい電動アシスト自転車というテーマでPASを作り続けている。PASを含め電動アシスト自転車は人に優しいかという基準で考えるとアシスト機能は確かに優しい。しかし重量、価格、バッテリー充電など優しくはない点がある。自転車の補助動力の歴史は浅い、世界初の電動アシスト自転車であるPASの発売からでは三十年ほどしか経っていない、まだまだこの分野は研究の余地があると考えられる。サイクリストとしてより優しい補助動力の誕生に期待している。