「鳴り物入り」とは楽器などで賑やかに調子を取って囃し立てること。日本舞踊や歌舞伎、あるいはお祭りやチンドン屋などでお馴染みのピーヒャラ、ドンドンだ。それでは自転車にも鳴り物を入れて、走行を盛り上げてはどうだろうか? 思い浮かんだアイディアの一つは中南米の楽器レインスティックだ。中空のサボテンの棒を傾けると、中の小石が転がって雨のような、波のような音がする。
まず、小さなレインスティックを車輪の中に取り付けてみる。自転車を倒立させて両端を輪ゴムでスポークに固定すれば、立派な楽器の出来上がり。車輪を回転させるとレインスティックが傾いて音が鳴る。しかも走行すると車輪は回転し続け、上下が入れ替わり続けるので無限レインスティックになるはずだ。連続した回転ではシェーカーのような音になるものの、これはこれで面白い。
次に配線用のホースに手芸用のビーズを入れ、車輪の中で円環になるように取り付ける。レインスティックは上下が入れ替わる時に音が途切れるのに対して、こちらは円環の中を常にビーズが動き続ける連続した無限ループができるはずだ。これをレインループと名付けたい。新しい楽器の誕生だ。ホースの種類や取り付け方、ビーズの大きさや量などを変えて試してみた。
使用したホースはいずれも凸凹がある蛇腹状になっている。凸凹にビーズが当たって音が鳴る訳だ。本来のレインスティックも内側に刺したサボテンの棘に小石が当たることで音が出る。そこでホースに待ち針を刺してみた。ビデオの3’00’からがそれで、抵抗が増えるためか落ち着いた音になる。ただ、タイヤのパンクを連想させる針は精神衛生上宜しくなく、この路線の追求は早々に放棄した。
個人的には小さなビーズを入れて、ホースを正円になるように取り付けるのが気に入っている。ビデオでは4’00″あたりから聞けるように、高めの音域で定常性が強くなるとともに周期性も感じられる。もちろん、他のバリエーションも更に探求したい。ただ、スポークの間隔は意外と狭いので、取り付けに苦労する。細く柔らかいホースが扱い易いが、自転車のホイールも進化して欲しいところ。
それではレインスティックおよびレインループを取り付けた自転車で実際に走行してみよう。軽やかでリズミカルな音や波のような繊細な音とともに走るのは楽しい。さらに何人かのアンサンブルで街や野を走り抜ければ爽快だろう。ただし、ある程度の速さになると遠心力でビーズが張り付いて音が鳴らなくなる。これは問題であるかもしれないし、特性として活かせるかもしれない。探求はまだまだ続く。