TTTは面白い

自転車ロードレーサーにとってTTTといえば、「チーム・タイム・トライアル」のことだ。チームの人数は様々だが、3、4人で1チームとして走るレースもあればプロのトップチームが走るレースなどでは8人ほどのチーム全員が一丸となって走るものもある。

TTTはチームが一列になって走り、なるべく前を走る自転車とそれに続く自転車の間隔を狭くすることが重要となる。そうすることによって先頭のメンバーが風除けとなって後ろのメンバーの空気抵抗を減らすことができる。すると、後ろのメンバーは体力を消耗せずに走ることができる。

しかし、そのまま走り続けると風を受け続ける先頭のメンバーが疲れてスピードが落ちてしまう。そうなる前に、先頭を交代して体力を温存していたメンバーが今度は先頭を走って後続メンバーを休ませる。これを「ローテーション」と呼んで、スタートからゴールまでをひたすらローテーションを繰り返しながらスピードとタイムを競う競技である。

Team Time Trial (from Wikipedia)

毎年8月の終わり頃、夏の最も暑い時期に三重県の鈴鹿サーキットで開催されている「シマノ鈴鹿ロード」には、一般参加のサイクリストも参加できるチームTT競技がある。なんといってもF1カーも走る鈴鹿サーキットを自分の自転車で力いっぱいのスピードで走ることができるのは、酷暑の中であっても楽しみの大きいイベントであった。信号もなく全員が一方向に走るサーキット走行は存外、安全である。

私が初めて4人チームで参加したTTTには、大変苦い思い出がある。スタートの前にお腹が空いてしまい、大きなおにぎりを食べてしまったことによって、消化と吸収のために血液が消化器に集中してしまい、鈴鹿サーキットフルコースを3周するレースの2週目を終えたところで、体が全く動かない状態になってしまったのだ。

TTTはレースごとに「先頭から○人目がゴールしたタイムがチームの成績」など、どの人がゴールした時点でのタイムをチームとしての成績とするかが定められている。4人中3人目のタイムが成績となるシマノ鈴鹿ロードでは、もしもチームの誰か一人が脱落してしまったとしても、3人がゴールできれば完走となる。

息のあったローテーションで2週を走り、最終コーナーを抜けてホームストレートで加速したときだった。急に息が上がり足に力が入らなくなる。「あ、これは、あかんやつや」と感じた私は前を走るメンバーに向かって、「だめっぽい!捨てて行ってください!」と声をかけた。ところが、このままチームの走りが私のペースに合わせてしまうと足手まといになってしまうという私の考えをよそに、メンバーたちは皆私を気遣い「おっしゃ、ゆっくり行こうや」とスピードを緩めてくれた。

ローテーションに参加せず前の3人に引っ張らせて体力を温存し、一番うしろで必死に食らいつき続け、なんとかゴールにたどり着けた時、この競技の素晴らしさを感じた。チームとしての一体感。タイヤとタイヤがぶつかりそうなほど自転車を近づけて走るお互いの信頼感。そして単独走では決して出せないスピードで走る高揚感。誰も、タイムを落とす原因となった私のミスを責める人はいなかった。

TTTは私が自転車ロードレース競技の種目の中でも最も好きな競技である。

TTTのローテーションは、レース中に限らず、グループでライドをするとき、特に長距離を走る時に有効となる。なるべくメンバー全員が体力を温存しながら走ることができるので、ハードなレースとは違うがツーリングにおけるチームプレイといえる。

たとえば、クラフトワークのムービークリップではメンバーたち自身がロードレーサーで走っているが、このような縦列走行もその一種といえる。

6月26日に開幕する第108回ツール・ド・フランスだが、新型コロナウイルスの影響もあってか、チームタイムトライアルは実施されないのが残念だ。

また、昨年は中止となって今年は規模を縮小して開催されるシマノ鈴鹿ロードでも、チームタイムトライアルは競技から外れている。

自転車は屋外で、人との距離を持ちながら走ることができる娯楽としても注目されているが、密集して走ることにもまた違った楽しみが詰まっている。自転車乗り同士が極限までお互いの距離を縮めて濃密に楽しむTTTのように、また誰かとチームを組んで走ることができる日がくることも、心待ちにする日々である。

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