自転車による通勤手当と出張旅費

新型コロナウイルスの感染を避けるために移動手段が変化している。電車やバスなどの過密な公共交通機関の利用が減り、代わって増えたのは自家用車、自転車、徒歩といった単独移動。ただし、自動車は交通渋滞になり、徒歩での長距離移動は難しい。そこで自転車だ。感染リスクが少ないだけでなく、市街地では自動車や電車よりも手軽に素早く移動できる。しかも心身の健康に良く、楽しい。

ここで気になるのは、業務での自転車による移動。例えば、自家用車や公共交通機関ではなく自転車を利用すると、その通勤手当は支払われるのだろうか。これは雇用主によって異なるだろうが、筆者の勤務先である情報科学芸術大学院大学を所管する岐阜県では自家用車でも自転車でも、自宅から勤務先までの距離に応じた通勤手当が支払われている。つまり、自家用車と自転車の違いはない。

岐阜県法規集によると「岐阜県職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例」の第十二条の六で通勤手当の支給対象を規定している。このうち第一項第二号は「自動車その他の交通の用具」を利用する場合で、その具体的な例として施行規則の第二十九条の六に「自転車」が明記されている。自動車や自転車の具体的な定義はないものの、今後の技術の発展を考えれば妥当な表記かもしれない。

(通勤手当)
第十二条の六 通勤手当は、次に掲げる職員に支給する。
[中略]
二 通勤のため自動車その他の交通の用具で人事委員会規則で定めるもの(以下「自動車等」という。)を使用することを常例とする職員(自動車等を使用しなければ通勤することが著しく困難である職員以外の職員であつて自動車等を使用しないで徒歩により通勤するものとした場合の通勤距離が片道二キロメートル未満であるもの及び次号に掲げる職員を除く。)

岐阜県職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例

(交通の用具)
第二十九条の六 条例第十二条の六第一項第二号に規定する交通の用具は、自動車その他の原動機付の交通用具及び自転車とする。ただし、国又は地方公共団体の所有に属するものを除く。

岐阜県職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例施行規則

自転車や自動車などでの通勤手当の額は、先の条例の第十二条の六の第二項第二号に規定されている。筆者の自宅から勤務先まで片道約2.5kmなので、月額2,900円だ。1ヶ月に20日出勤するとして、日額145円(*1)で往復5kmを走る。体重が60kgとすれば消費カロリーは126kcalに対して、完全栄養食COMP Drinkの145円分は117kcal(*2)しかない。これではいずれ栄養失調となって餓死する。より安価なカロリー摂取が必要だ。

*1 2,900円/月 ÷ 20日/月 = 145円/日

*2 COMP Drinkの6パック定期購入価格は7,410円なので、1パックの価格は1,235円。1パックあたり1000kcalなので、145円分のカロリーは 1,000kcal ÷ 1,235円 × 145円 = 117.40kcal となる。

岐阜県職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例 第十二条の六の第二項第二号より(2021.07.31取得)

一方「車」で出張する場合は「岐阜県職員等旅費条例」第六条五項に車賃を1km当たりの定額または実費額等として支給するとなっている。その定額は同条例十八条第一項で37円/kmとなっている。この金額は「国家公務員等の旅費に関する法律」第十九条第一項と同額(1990年4月1日施行)だ。これにはガソリン代など動力費、車両の購入維持費、そして運転に要する人件費が含まれるようだ。

(普通旅費の種類)
第六条 普通旅費の種類は、鉄道賃、船賃、航空賃、車賃、旅行諸費、日当、宿泊料及び食卓料とする。
[中略]
5 車賃は、陸路(鉄道を除く。以下同じ。)旅行について、路程に応じ一キロメートル当たりの定額又は実費額等により支給する。

岐阜県職員等旅費条例

(車賃)
第十八条 車賃の額は、一キロメートルにつき三十七円とする。ただし、公務上の必要又は天災その他やむを得ない事情により定額の車賃で旅行の実費を支弁することができない場合には、実費額による。

岐阜県職員等旅費条例

ところが、以前に自転車で出張したところ、旅費が支給されなかった。この事情を筆者が調査したところ「岐阜県職員等旅費条例施行規則」第十八条第一項第一号ニにおいて「移動に要する経費を旅行者が負担しない行程」は「車賃の全額を支給しない」と定められており、自転車では移動経費の負担がないと判断されるようだ。このあたりの事情については、継続して調査したい。

(旅費の調整)
第十八条 旅費条例第四十六条第一項に規定する「この条例又は旅費に関する他の条例の規定による旅費を支給した場合には不当に旅行の実費を超えた旅費又は通常必要としない旅費を支給することとなる場合」とは、次の各号に掲げる場合のように、旅費条例の規定による旅費(以下「正規の旅費」という。)を支給することが旅費計算の建前に照らして適当でない場合をいい、その場合においては、各任命権者は、当該各号に掲げる基準により旅費の調整を行うものとする。
一 旅行者が次のイからニまでのいずれかに該当する行程を含む旅行をしたため、正規の鉄道賃、船賃、航空賃又は車賃を支給することが適当でない場合には、当該行程に係る正規の鉄道賃、船賃、航空賃又は車賃の全額を支給しないものとする。
[中略]
ニ イからハまでのほか、移動に要する経費を旅行者が負担しない行程

岐阜県職員等旅費条例施行規則

ちなみに新型コロナウイルス禍以前から自転車利用が推奨されている。例えば国土交通省は「自転車通勤導入に関する手引き」を2019年に公開している。国税庁は自家用車と同じく自転車に対しても通勤手当が非課税となることを示している。さらに最近では自転車活用推進本部が「新しい生活様式を踏まえた国の取組」として様々な事業を展開している。

このように自転車による移動は国家的な要請でもあり、世界的にはさらに水準が高い。感染予防のために公共交通機関は避けるとしても、自動車は交通渋滞はもとより交通事故や環境破壊など問題満載なので、自転車を厚く優遇するべきだろう。それでは、他の企業や官公庁での通勤手当や出張旅費はどのようになっているのだろうか。コメントやコンタクトでお知らせいただければ有り難い。

【追記】当初の記載した自転車による出張旅費に関する筆者の見解を削除した。これは内部機関との意見調整が必要とのことだった。(2021.06.26)

【追記】本文でリンクした条例や規則を開こうとするとエラーになる。この場合は岐阜県法規集を別ウィンドウで開いた上で、各リンクを開くと良いようだ。また通勤手当の表を引用して掲載した。(2021.07.31)

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