猫と自転車に乗れたなら (7)

猫と自転車に乗れたなら〜

先週の土曜日、筆者は「新型グループ・ピクニック 2020 Autumn」に参加、ミニFMの実験的放送を試してみた。実験の主な目的は災害時に使える簡易ラジオ放送の模索。しゃべり手がiPhoneのマイクアプリで自分のしゃべりや道ゆく人たちのインタビューを、同じiPhoneに接続したトランスミッターを通して電波として発信。この電波を筆者の自転車の前面につけたラジオで受信する。USB電力で送り出す超超微弱な電波とはいえ、10メートルほど離れても電波が受信できるとは、なかなかすごい。

さて、ご存知のように、日本は自然災害大国といわれる。最近は温暖化の影響で災害の脅威が増し、被害も増大している。「防災思想の普及、功労者の表彰、防災訓練等これにふさわしい行事」として1960年に防災の日が設定され、防災訓練や啓発活動が現在も行われているが、意識するしないに関わらず、防災は私たちの生活にとって常に重要なのである。

災害が起こる度に、ラジオ、懐中電灯、ヘルメット、乾パン、水など防災グッズが入った非常用袋を揃えなければと反省するが、最近では、防災グッズ以外に、移動手段の確保も指摘されている。震災直後から公共交通機関が動かなくなったり、道路が寸断されたり、建物が倒壊したりなど、人が移動することが困難となる。こういった状況で、実際に罹災者の移動手段として活躍したのが自転車。これは阪神淡路大震災や東日本大震災の際に、家族や知人との連絡、配給物資の受け取りなど被災者の生活の足として役立っただけでなく、緊急救援活動や被災地支援のボランティアなど復旧復興の活動にも貢献したという経験に基づく。東日本大震災では、被災地でない都心部などでも多勢の人たちが帰宅困難者となった。そういった場面でも自転車は役に立つ。

自転車を「災害時移動用自転車」として防災時に使用できるよう準備をすすめる自治体も増えている。例えば、神戸市東灘消防署が監修する「震災時のサバイバルパッケージ」には、自転車について必要な情報が掲載されている。東京都では、都民提案事業として「災害時の活用など多様な課題を解決するための『自転車整備』支援事業」が採択され、2018〜2019年に実施している。

自転車を活用した避難訓練や復旧支援も始まった。浜松市は自転車による道路被害の確認や物資運搬の実効性を検証する実験を今年実施している。「サイクルトレーラー」に支援物資を載せ、浜名湖周辺で活動する自転車愛好家が災害ボランティアになって運ぶ想定で実験したり、走行経路や道路情報を共有する自転車用スマートフォンアプリを使って、災害時に生活道路の通行可否を確認する模擬訓練したり、既存の製品やサービスなどを災害時に応用する方法について実験を行っている。

救助活動でも自転車の活用がすすむ。愛媛県の八幡浜消防ではマウンテンバイクを活用したMTB隊を6年ほど前に発足している。最近では悪路の走行に適している自転車「ファットバイク」の導入も増えている。例えば、先に紹介した浜松市と湖西市でもファットバイクの試行走行を行っている。下の動画は、南海トラフを想定した徳島県石井町と神山町のファットバイクの訓練の様子だが、液状化した被災地や瓦礫などの上を走るように極太タイヤが使われている。

災害時の自転車活用に関しては研究も行われている。例えば、山口大学、岐阜大学、京都大学の研究者らによる「津波避難における移動手段と自転車活用に関する研究」では、距離や時間との関係から、自転車での避難の有効性を実証している。また、静岡文化芸術大学デザイン学部の研究室では、災害時に水を運搬する自転車の開発を行なっている。これは足元にポリタンクを置けるようにし、一度で20リットルの水を運べるのが特徴。タイヤを小さくし重心を下げ、地面から荷台までの高さを低くすることで載せる負担を軽減している。

(出典:静岡新聞)

参考:津波避難における移動手段と自転車活用に関する研究
   災害時に水を運ぶ自転車、改良の意見交換
   災害時役立つ自転車改良、荷物積む負担さらに軽減 浜松

市場ではすでに様々な防災用自転車がでている。例えば、防災グッズや防災の専門店セイショップでは“防災する自転車”が販売されている。これは、ノーパンクタイヤ、電動アシスト自転車、下り坂や漕いで発電・蓄電、そしてスマホなどに充電できる特徴をもつ。セイショップでは、備蓄する自転車として折りたたみ式ノーパンクタイヤや、チャイルドシート付きの防災自転車も販売している。

サイクルベースあさひは、「備える」「積載する」「移動する」の3つの要件を備えたエマージェンシーバイクシリーズを発売している。自転車、トレーラー、収納ボックスはどれも災害用にデザインされている。もちろん。、非常時以外でもアウトドアや機材の運搬や引越しなどにも活用できる。

災害時の避難に関しては、最近はペット同伴が問題となっている。今でも同伴できない避難所は多く、車中避難する人たちが多い。最悪の場合、ペットを置き去りにするといった事態も起きる。筆者もトラコを含む8匹の猫たちがおり、どのように避難したらよいのかは最も悩ましい問題である。自動車が困難な場合は、やはり自転車が最有力候補かもしれない。実際に3匹のペットと一緒に避難訓練をした人によれば、自転車が一番よさそうだ。

(出典: PetLIVES

我が家の場合は、トレーラーをつけてキャリーケースを4つくらい置き、1匹を背負うというのが現実的。残りの子たちは、相方がカゴに入れたり背負ったりすれば済む。避難所でペットは自転車置き場などに置かれることも多いから、自転車で避難したらそのまま自転車置き場で一緒に過ごせるかもしれない。

ということで、今度は避難訓練しようね、トラコ。

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