GoPro HERO8のメランコリックな進化

半年ほど前にDJIは初のアクション・カメラOSMO Actionを発売し、独壇場であったGoProのHERO7に肉薄するスタビライズ性能を持っていた。しかも、起動速度や使い勝手では追い越した面もあった。そしてDJIは新しいHERO8を発売する。ライバルの登場が予感させた共進化は起っただろうか? 何はともあれ定番のスタビライズ性能を比べてみよう。

OSMO Actionのスタビライズ性能も良好だが、HERO8では画像安定技術HyperSmoothが2.0となり、さらにタイトになった印象。しかも、HyperSmoothのブーストをオンにすると、意図的に揺らしても何事もなかったかのように打ち消してしまう。ここまでくると自転車の躍動感まで損ないそうなので、通常はオフでも良さそうだ。その場合は撮影後にもブーストできると良いが、そうはなっていない。

さらにGoProアプリでの水平補正も強力だ。自転車なら右や左に曲がる時に必ず生じる傾きが水平補正で消滅するので、極めて不自然な映像になる。遠心力で外側に吹き飛ばされそうで落ち着かない。この機能は意図せずHERO8を傾けて撮影してしまった時に有効だろう。ただし、処理が不完全なのか不自然な傾きが生じることもある。タイムラプス映像などには水平補正が効かないのも残念。

これらの映像で分かるように、HERO8はメリハリのある鮮明な色調になった。これはHuaweiのような中華系の人工的で過剰な色合いだ。没個性的なOSMO Actionの映像が霞んで見えるのは、DJIこそ中華メーカーでGoProはUSAブランドだから立場逆転とも言える。これではGoProがアクション・カメラの覇者として君臨し続けることになりかねない。DJIには再奮起を願いたい。

DJI OSMO Action(左)、GoPro HERO8 Black(右)

ところで、HERO8はケースが不要になり、本体だけで各種マウンタが利用できる。これで随分と使い勝手が良くなった。一方、バッテリーとUSB-C端子が同じ側面に配置されたのは改悪。長時間撮影のために外部バッテリーをUSB-C端子に繋ぐと、カバーを閉じることができず、バッテリーが外れかねないからだ。これはUSB-C用の穴が空いたカバーに取り替えるのが良いだろう。

このようにGoProはHERO8を着実に進化させている。ただし、劇的な躍進かと言えば、そうではない。進化の袋小路に陥る危惧すらあり、少々憂鬱な気持ちになる。特にブーストや撮影モードなど設定項目が増えたのはいただけない。撮影時には何も考えずに、ただ撮影ボタンを押すだけにして欲しい。写真なのか動画なのか、安定化させるのか否か、などは後で決めたいわけだ。

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