お尻の悩みを解消する大作戦

ロード・バイクに乗り始めて遭遇する最大の苦痛はお尻の痛みだろう。地面からの振動が骨盤、股、尻を痛みつける。綺麗な舗装道路であっても常に細かな振動があるし、ロング・ライドともなると痛みが累積して自転車を乗り捨てたくなるほど辛くなる。これは自転車の乗り方によって随分と解消されるが、ここではクッションやサスペンションによって物理的な改善を試みよう。

ビブ・ショーツのパッド

ロード・サイクリングためのウェアは、空力特性を高めるピチピチと、振動を和らげる股からお尻にかけてモッコリが特徴。このようなビブ・ショーツは品質の良いものを選びたい。肌に直に接して振動や摩擦を受けるので、下手をすると逆効果になりかねないからだ。Rapha製品では安価なCoreラインでも快適に振動を低減する。ちなみに、ビブ・ショーツの下には下着を着けない。これ常識ね。

サドルのパッド

モッコリがどうしても嫌なら、クッション性の高いサドルを使う手もある。ビブ・ショーツのパッドをサドル側に移すわけだ。この手の用途には、筆者はゲル(ジェル)がたっぷり詰まったSella SMPのTRKゲルを使っている。肉厚のパッドと大胆に湾曲した形状が、体重を広い面積で受け止める。柔らか過ぎることもなく、快適にライドができる。しかし、500g近い重量が悩ましいところ。

サドルのサスペンション

サドル自体のクッションではなく、サドルとシート・ポストの接合部に取り付けるサスペンションもある。どれが良いのか試し比べた訳ではないが、購入したのはjpfashioning社の安価な製品。「つ」の字型の弾力性のある金属レールが湾曲して振動を抑える。これは少なからず効果があるものの、少なからずフワフワと前後がピッチ運動する。曲芸じみた乗り心地は楽しくも、シリアスな用途には向かない。

フレームのサスペンション

先のサドル・サスペンションはジョークじみているが、真面目に取り組んだ製品もある。TrekのMadone 9.9はエアロ・ロードでありながら、振動吸収性の高いフレームを実現している。これはIsoSpeedと呼ばれ、フレームからシートポストを分離して、しならせる。しかも、しなりが分からないほどに剛性が高いにも関わらず、確実に振動が低減されるから不思議だ。

このような工夫で路面振動を抑え、お尻の痛みを低減することができる。さらに言えば、フル・サスペンションや太く柔らかい低空気圧タイヤは効果が高いが、一方でペダルを漕ぐ力が逃げてしまい、走行性が悪くなってしまう。つまり、マウンテン・バイクならビブ・ショーツは不要だが、舗装道路ではママチャリの方が走り易い訳だ。この二律背反性に対して、うまくバランスを取る必要がある。

筆者も御多分に洩れず痛みが酷かったが、ビブ・ショーツで随分と軽減され、次いでMadone 9.9に乗るようになって、ほぼ気にならない程度に解消した。ただ、今から思えばウェアや機材の効果だけでなく、ロード・バイクに慣れて耐性ができ、乗車姿勢も良くなったとも考えられる。様々な要因が重なるはずで、あれこれ対策を練っている時が一番楽しいのかもしれない。

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