桂林市街地での自転車事情

桂林〜陽朔のサイクル・スーパーハイウェイ(勝手な呼称)は、ロンドンのそれよりも遥かに快適だった。だが、それだけでなく、桂林の市街地でも自転車環境は素晴らしい。何しろ、ほとんどの通りで自転車専用道が確保されている。写真は桂林のメインストリート中山中路で、右から歩道、自転車道、自動車道だ。これは簡単なほうで、街路樹のある幅広い分離帯が設けられた道路も多い。

ただし、中国では電動スクーターも自転車道を走るので、普通の自転車は肩身が狭いかもしれない。自動車も何食わぬ顔で自転車道に入ってくる。しかし、交通マナーと運転センスは良いようで、危険を感じさせない。また、住宅街の幅の狭い道でも、きちんと分離されているのに感心する。路面に白線が描かれただけの道路も見かけたが、全体としては素晴らしい道路事情と言える。

実は桂林市の市街地人口は150万人と、日本なら福岡や神戸に並ぶ大都市だ。だが、道路を含めて街全体が余裕をもって設計されている。流石に観光名所は渋滞するが、それ以外は目抜き通りでも混雑は少ない。中心部から少し離れれば、随分と道路が空いてくる。路面も良好で、段差や陥没などは皆無。街の全域がフラットで坂道は少ない。桂林には地下鉄がないので、地上だけが移動レベルだ。

さて、これだけ道路事情が良ければ、自転車は大活躍できる。実際、街の至るところにカラフルな自転車が置かれている。これぞ噂に聞く、乗り捨て可能なドックレス型シェアリングの自転車だ。黄色のofoとオレンジのMobikeが二大巨頭と聞くが、桂林では水色のHelloBikeも多い。現地ガイドさんによれば、HelloBikeは他と比較して軽量で乗りやすいらしい。

乗り捨てなので、シェア自転車に自分で鍵をかけたり、自宅の庭に置いてしまう人もいるそうだ。他の人が利用できないので、事実上、自分専用車になるわけだ。また、数多くの自転車がある場所もあれば、少ない場所もある。このような偏りを解消するために、自転車の再配置が行われる。これが小さな貨物三輪車の荷台に豪快に山積みされていた。これでは自転車の寿命が半減するに違いない。

パリのVélib’に代表される伝統的なドック型シェアリングとしては、桂林公共自行車(Guilin Public Bicycle)が運用されている。自転車がドックに整然と並ぶ姿は美しいが、ドックレス型自転車の雑然とした圧倒的なパワーに押され気味らしい。ドックを設置するのは場所も費用もかかるが、ドックレスでは不要。利用者としてもドックレス型のほうが遥かに利便性が高いのだろう。

ただし、これらを外国人旅行者が利用するのは不可能だ。まず、桂林公共自行車は住民向け公共サービスなので、旅行者には利用カードが発行されない。また、HelloBikeなどのシェア自転車はQRコードを使ったモバイル・ペイメントを利用する。しかし、AliPayやWeChat Payなどの決済可能なアカウントは作れない。何とももどかしい話だ。ただし、旧来型のレンタル自転車は観光客向けに数多くある。

ところで、道路を観察すると自転車に乗っている人は比較的少ない。道端に並んでいる自転車の多さを不自然に感じるほどだ。一方、圧倒的に多いのは電動スクーター。これは日本円にして5万円程度と安価であり、免許もヘルメットも不要。パワーが有り、二人乗りも容認されているなどメリットが多い。ただ、電動スクーターのシェアリングはないので、すぐに気軽に乗るにはシェア自転車となるらしい。

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