Recon Jetは電気眼鏡の地位を得るか?

カナダRecon Instruments社(以下、Recon社)のRecon Jetは、$499のサイクリング用の眼鏡型コンピュータだ。左目の下にディスプレイがあり、各種情報を表示する。これはGoogle Glassに似ており、実際にも類似した機能を持つ。しかし、Recon社はより早い時期から製品をリリースしており、Google Glassとは違って現在も発売を続けている。ただし、2015年にIntelがRecon社を買収、現在はIntelの一部門だ。

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筆者は2012年にOakleyのAirwaveを購入した。これはRecon社のMOD LiveなるHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)をウィンター・スポーツ用のゴーグル型に組み込んでいた。GPS用の地図はスキー場しか用意されていなかったが、速度や方角などの表示は自転車でも有用だった。ただし、スキー用のゴーグルとしても大ぶりであり、これを付けて自転車に乗る姿はかなり奇妙だったはず。

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Recon社は次なるターゲットとして自転車を選択した。自転車ではサイクル・コンピュータを使うことが多いので、HUDとの親和性が高いと判断されたのだろうか。一方で、自転車は余計なものを削ぎ落とす。重たいもの、かさばるもの、複雑なものは敬遠される。そのために開発が難航したのかもしれない、当初の予定より随分遅れて2015年5月にRecon Jetが届いた。その主要な機能は以下の通りだ。

  • 400×240ピクセルのヘッド・アップ・ディスプレイ
  • 写真と720Pのビデオが撮影できるカメラ
  • デュアル・マイクとスピーカー
  • GPS、加速度、ジャイロ、方位、気圧、赤外線のセンサー
  • ANT+、Bluetooth LE、Wi-Fiの無線通信
  • スマートフォンに連動する電話やメッセージなどの通知
  • 光学式タッチパッドと2つのボタンによる操作
  • AndroidをベースにしたReconOS
  • 1 GHz dual-core ARM Cortex-A9のプロセッサ
  • 1GBのメイン・メモリと8GBのフラッシュ・メモリ
  • 充電とデータ用のmicroUSBポート
  • 交換可能なバッテリー
  • 交換可能なレンズ

Recon Jetは重量85gで、軽量とは言い難いが、重たいとも感じない。ただ、少しでもずれるとHUDが見にくくなる。実際の見え方としては、視界の右下部分が黒く覆われ、その中央に画面が小さく浮かぶ。画面を見るには視線移動と注視が必要。これは嬉しくないが、それ以上に問題なのが右後方を振り返る時。HUDが邪魔をして後方が見えないのだ。もっとも、右側走行の国では問題にならないのかもしれない。

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画面操作は、サイドに備わる2つのボタンと光学式タッチパッドで行う。これらは手袋をしていても扱える。操作体系は統一されているが、自転車に乗りながら操作するには、煩雑に感じる。画面の情報量も多過ぎて、瞬時に把握しにくい。より単純化して直観的に操作できることが望まれる。ちなみに、音声コマンド機能は備わっていない。風切り音などのノイズで、正確な音声認識が難しいのだろう。

Recon Jetはスピードやケイデンス、心拍やペダル・パワーなどの外部センサーの値を表示できる。これらは自転車用ディスプレイとしては必須の機能だ。センサーとの通信にはANT+やBluetooth LEを用いる。BontragerのDuoTrap SというセンサーもANT+とBluetooth LEの両方に対応している。iPhoneとはBluetooh LEで、Recon JetとはANT+で接続したところ、両方とも同時に使うことができた。

他にも周辺の地図に現在位置を示したり、友人がいる方向を示すことができる。これまでの走行データの確認や、着信やメッセージなどの通知の表示も可能。写真やビデオを撮影して、その場で再生するのも楽しい。また、スマートフォンの音楽プレーヤの操作もできる。画面をカメラで撮影するのは難しいので、Recon Jetのプレス・キットからスクリーン・キャプチャをいくつか転載しておこう。

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連続使用可能時間は公称は4時間ながら、実際の走行では3時間前後だった。前述のようにDuoTrap SセンサーをANT+で接続し、ディスプレイの輝度は50%程度、視線検出をオン(見ていない時はディスプレイを自動オフ)にした状態での実測。ロング・ライドには、交換用バッテリーが必要だろう。モバイル・バッテリーで充電しながら使用しても良い。もっとも、そこまでして長時間使いたいとは思わないが。

詰まるところ、Recon Jetは楽しいが、なくても困らない。ハンドルに取り付けたディスプレイを超える利点を見出すことは難しい。視線移動が不要になれば快適になるだろうか?直観的な操作は可能だろうか?自転車ミニマリストにとってのキラー・アプリは何か? ご多分に漏れず、Recon JetもProバージョンが用意され、コンシューマを離れてエンタープライズ化しつつある今日この頃だ。

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