チェスター・リーブスのママチャリ文化論

アメリカ人チェスター・リーブスによる「世界が賞賛した日本の町の秘密」(2011年)は、そのタイトルからは連想できないが自転車、それもママチャリについて論じた新書本だ。ただし「ママチャリ」だけではなく、ママチャリによって営まれる生活圏である「自転車町内」と、ママチャリでは辿り着けない目的地に繋がる「公共交通」、これらが三位一体となって日本の優れた特質を形作っていると説く。

著者はカルチャラル・ランドスケープ史の研究者で、20世紀アメリカの都市部での自動車受容が専門。日本での客員教授に就任する際にロード・バイクを携えて来日したところ、日本の生活に溶け込んだママチャリに衝撃を受けたと言う。この素晴らしいママチャリと、ママチャリを基盤とした社会の真価を世に問うべく書かれたのが本書だ。その目次を引用しておこう。

第1部 日本の町が世界から賞賛される理由

第1章 「ママチャリ」は世界に誇る日本の発明品!
第2章 「自転車町内」は先端コミュニティ!
第3章 どこにでも簡単に移動できる国はじつは珍しい

第2部 日本の町の良さを守れ!

第4章 「ママチャリ文化」は将来も存続できるか
第5章 「自転車町内」の将来
第6章 「自動車」と「公共交通」のゆくえ

チェスター・リーブス著「世界が賞賛した日本の町の秘密」

多くの日本人にとっては「自転車は下駄」であり、特に意識することもない生活の道具に過ぎない。賞賛もなければ感謝もない。タイヤのパンクに悪態をつくのが関の山だ。だから、外からの目で見て、これまで気づかなかったママチャリの素晴らしさを並べ立てられると、こそばゆくも満更でもない気分になってくる。そう、ありがちな「異人さんから見た日本スゲー本」なのだ。

確かに、ママチャリだけであれば日本スゲーで終わってしまいそうだ。だが、本書は自転車町内という社会コミュニティ論や、公共交通機関に連なる移動システム論へと考察を展開することで、ママチャリの独創性を浮かび上がらせようとしている。それでも首をかしげる点がないわけではないが、ママチャリを包括的に捉えようとする姿勢に共感を覚えるに違いない。

このことは第2部で批評的に論考される。それは自転車の不法駐車や放置破棄から、自動車による道路の専有弊害、歩道と車道から自転車レーンの分離など、今日でも未解決の諸問題だ。これは自転車町内や公共交通でも同じ。こうして日本スゲーではなく日本マダマダだったことに気づかされる。本書の刊行から既に数年が経過した。次なる数年で如何に改善できるかが問われている。

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