電動車椅子WHILLの試用

事故で大腿骨を骨折して、当初は手術もあってベッドに寝たきり状態。その後は車椅子で移動、次いで松葉杖をついて歩いていた。そのような状況を知った知人から申し出があり、電動車椅子をお借りすることになった。届いたのはWHILL Model Aなる美しい造形の車椅子。デザインの良さだけでなく、座り心地や走行性能も抜群だった。日本のベンチャー企業WHILL株式会社が開発、販売をしている。

まず、前提として書いておくべきは、筆者の車椅子や松葉杖の使用は、直近の2ヵ月間に限られることだ。また、間もなく骨折が治癒して普通に歩行できる見込みでもある。従って、長期に渡って補助具が必要ではなく、「一見さん」の立場での試用となる。つまり、ここでの考察は、車椅子を常に必要とする方のそれとは異なるだろう。ただ、健常状態では得られない体験であることも確かだ。

さて、一般的な車椅子は、段差や傾斜がなく広い場所での使用に限られる。たとえ1〜2cmの僅かな段差であっても、自力で乗り越えるのは苦労する。病院などはフラットで広い床だが、屋外では歩道にしろ商店街にしろ、恐ろしく段差と傾斜があり、信じられないほど凸凹している。健常時には何ら気にならなかった道が、車椅子には苦悩と恐怖の道になる。洒落た石畳の街路は地獄だ。

これがWHILLなら屋外でも快適に走行できる。段差は7.5cmまでなら乗り越えられる。坂道は10度までなら登れる。歩道の構造基準によれば、歩道と車道の高低差は5cm以下、歩道の勾配は5%以下、特別な理由があっても8%以下とされているので、ほぼどこへでも行ける。 しかも、通常で時速6kmと普通の歩行よりも速く移動できるし、US版アプリで設定すれば時速10kmにもなる。

WHILLは左側のレバーで電源投入、停止とシート移動、3段階で最大速度を決める。右側の全方向スライダーは、ジョイスティックに似た操作感で、進む方向と速度を決める。このスライダーの操作感は良好で、すぐに望む方向に行けるようになる。小さな24個のタイヤで構成される前輪のおかげで小回りも効く。何よりも、進みたいだけ進む安心感があるのが素晴らしい。

車椅子は狭義の自転車ではないが、人力で移動する乗り物としては同類と見なせる。一方、電動アシスト車椅子も販売されているが、WHILLは電動自転車やオートバイに近い存在だろう。手の僅かな動きだけで自在に動き、人が歩くよりも速いとあっては、これはある種の優越性や全能性に繋がる。このような選択肢が与えられた時に、何を選ぶべきだろうか、まだ完治しない膝を抱えて考えている。

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