テイチライド 07:2画面同期とAIによるトラブルシュート

クリティカル・サイクリング展」が終了した。このプロジェクトに参加し、自らの表現を形にできたことを光栄に思う。現在は展示の余韻の中にあり、内容の咀嚼には時間を要するため、本稿では設営時に発生したトラブルとその解決策を技術的な備忘録として記録する。同様の2画面展示を検討する方への一助となれば幸いだ。

3Dスキャンアプリ「Scaniverse」で撮影した展示風景。トラブルが発生した時の気持ちを表しているよう。

1. 準備段階——システム設計と検証

今回の展示する作品「細い道(接続・反復)1:25,000」では、別々の場所で撮影した走行記録を表示する2枚のモニターを同期させる必要があった。2つの映像をずれなく再生し続けるのは、意外と難易度が高い。そこで今回は、2つのHD映像(1920×1080ピクセル)を横に連結した1枚の横長動画(3840×1080ピクセル)を作成し、これを2画面にまたがって一度に映し出す手法を選択した。

  • 映像仕様: 3840×1080のビデオファイルを生成。
  • 使用機材: ノートPC(NVIDIA RTX 4060搭載)。
  • 再生の仕組み: NVIDIA Surround(複数のモニターを1枚の仮想モニターとして統合するNVIDIA製GPU向けの機能)で2枚を認識させ、OBS Studio(オープンソースのビデオ録画・配信ソフト)のプロジェクター機能を用いて、枠なしで全画面に映像を映し出した。
  • 事前検証: 自宅環境にて27インチモニターとプロジェクターを併用し、システムが安定して動作することを確認。本番用には、32インチモニター2台とスタンドをIAMAS(情報科学芸術大学院大学)から借用した。
映像配信ソフト「OBS Studio」。HD画像を連結した横長映像を2画面に映し出し、同期を取った。

2. 設営段階——物理的な不適合と暫定対応

設営現場では、まず機材の物理的な接続においてトラブルが発生した。

VESA規格の不一致: 借用した32インチモニターの背面ネジ穴の間隔がVESA 75×75mm(VESA規格とは、モニター背面にある固定用ネジ穴の国際標準間隔のこと)であったのに対し、用意したスタンドはVESA 100×100mm以上にしか対応しておらず、物理的に固定できなかった。

現場でのリカバリー: 赤松正行氏の尽力により、スタンドの規格に合う別のディスプレイ2台を急遽確保し、設置を完了した。(感謝)

初動テスト: 代替モニターにてPCを接続し、2画面が統合して表示されることを確認。時間が押していたため、自宅テスト用の旧バージョン映像で表示を確認し、設営を終えた。

3. 展示初日の朝——最終版データでの不具合発生

展示初日の朝、ブラッシュアップを施した最終版データを投入したところ、前日のテスト時には見られなかった不具合が連鎖的に発生した。

再生のカクつき: 最終版はテスト版と同様のビットレートであったにもかかわらず、映像が滑らかに再生されなかった。

音声のトラブル: 映像は流れるが音が出ない、またはステレオ設定の影響で片方のモニターからしか音が聞こえない事象が発生した。

システムの不安定化: 焦りから操作を急いだことでPCが完全にフリーズ。さらに、インターネット未接続であったにもかかわらず予約されていたWindows Updateが再起動時に開始され、大幅な時間ロスを招いた。

Windows Updateが走り、再起動中。待っている間、少し落ち着こうと写真を撮った。

4. AIを用いたリアルタイム・トラブルシュート

一人での解決が困難な状況下、生成AIを「遠隔の技術スタッフ」として活用し、問題を切り分けた。

AIは、事前の対話を通じて展示の構成・機材・目的をすでに把握していた。この『文脈の共有』こそが、現場での即応を可能にした最大の要因である。パニック状態で言語化が難しい現場でも、操作画面をスマートフォンで撮影して送るだけで、AIは状況を把握してくれた。

例えば、ソフトのバージョン違いにより、AIが提示したメニュー項目が画面上に見当たらない局面があった。しかし実際のメニュー画面を写真で共有したことで、AIは現在のUI(ユーザーインターフェース、操作画面のこと)上のどこから目的の設定画面に入れるかを具体的に指示し、一から説明する手間を省いて的確な解決策を導き出した。

  • 映像の改善: OBS Studioを「管理者として実行」することでPCリソースを優先的に割り当て、カクつきを解消。
  • 音声の復旧: 音声モニタリング設定の切り替えと、左右から同じ音が出るモノラル出力への変更により、両モニターから均等に音声が出力されるよう設定。
  • 表示の確定: NVIDIAの設定画面で、背後に隠れていた確認ボタンを指摘どおりに見つけ出し、2画面統合の設定を確定。

これらの手順を一つずつ実行した結果、開場直前に最終版データによる正常な同期上映を実現した。

5. まとめと教訓

VESA規格の落とし穴: インチ数だけでなく、背面のネジ穴規格(75mm/100mm)の確認は必須である。

OS管理の徹底: 展示用PCは「Windows Updateの一時停止」を事前に設定し、オフライン環境でも不意な更新が走らないよう備えておくべきだ。

AIとの事前共有の有効性: 技術構成を事前にAIと共有しておくことで、緊急時に「目」と「脳」の代わりとして機能し、迅速な復旧が可能になる。


次回は、展示作品や「クリティカル・サイクリング展」の感想などを書こうと思う。

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