Visions in Motion 12:走査(スキャン)

年一度刊行されている『IAMAS紀要』は、教員および外部執筆者による寄稿を中心にメディア表現研究を社会に提示し、その体系の礎となることを目的としている。

第8巻(2016)と第12巻(2020)は、クリティカル・サイクリングの記事として紹介されている。これらの表紙のビジュアルを継続的に担当しており、それぞれの巻ごとのデザインについて振り返ってみる。まずはじめに連続性を考え、身の回りにあるものをモチーフに、手法はスキャンすることに限定した。紀要の特集内容から関連したモチーフ(時計の部品、本、縄、水滴、スキャナー、緩衝材)を選び、基本的に実寸でレイアウトしている。

第8巻・2016年

第9巻・2017年

  • 特集:新しい時代 メディア・アート研究事始め
  • 色:PANTONE2597
  • モチーフ:2001年に出版されたジョン前田の著書『MAEDA@MEDIA』の小口
    It is customary that the edges of a page be neglected in favor of its f ront and back.

第10巻・2018年

  • 特集:メディア表現学を考える 研究手法の現在
  • 色:DIC-F2 フランスの伝統色(ACIER 铁灰色)
  • モチーフ:エアキャップ(緩衝材)

第11巻・2019年

  • 特集:メディア技術がもたらす公共圏
  • 色:プロセスカラー:K(ブラック)+マットニス
  • モチーフ:ロール状に巻かれた縄をスキャン台上で回転

第12巻・2020年

第13巻・2021年

  • 特集:オンラインにおける表現とプラットフォームを「共集性」から考える
  • 色:プロセスカラー:M(マゼンタ)+ Y(イエロー)
  • モチーフ:スキャナーの機器自体を撮影することで、撮る撮られるの反転した状況を作り、実世界と仮想世界の境界面を意識した。

第14巻・2022年

  • 特集:『ねお展:アジールであり続ける地域のこれまで そして これから』
  • 色:プロセスカラー:CMYK
  • モチーフ:腕時計の針を拡大し、肉眼では気付きにくいディティールを強調した。スキャン時にモチーフの上に覆っていた布を動かしたため偶然性によるノイズのような効果が現れる。

印刷現場ではドラムスキャナーという業務用機器を回転してスキャンされる。紹介した事例のように自由度が高いモチーフをスキャンするために、A3サイズのフラットヘッドスキャナーを使用している。スキャン(走査)とは「画像を多くの点に分解し、それぞれの点の明暗などを電気信号に変換するために、一定の順序で各点をたどること(大辞林)」。

毎月一度の投稿で「自転車」とは程遠いテーマを扱っている。その継続性や連続性の中にテーマとの関連が見出せるか否か、気長にお付き合いいただきたい。

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