鹿児島の離島を巡る (1) 屋久島ライド

2月は一年でもっとも寒い時期。そこで軟弱者の筆者は知人とともに南の島に向かった。九州の南、鹿児島の離島、屋久島と種子島だ。中部圏からは直行便がないので、名古屋空港から福岡空港を経由して屋久島空港へ。早朝に出発してトランジットが3時間ほどあり、市街地に出て博多ラーメンをいただく。そして小さなプロペラ機で屋久島に降り立ったのは14時過ぎ。冬とは思えない明るい日差しと暖かさに歓喜する。

屋久島空港に到着したプロペラ機

投宿して一息つき、近くのバイク・ショップで原付(オートバイ)をレンタル。標高1,000mを超える山岳地帯を目指す。道は急勾配で細く曲がりくねり、湧き出る水で滑りやすい箇所も多い。目的地であった紀元杉には遠く、途中のヤクスギランドで夕闇が迫り、やむなく引き返す。自転車でヒルクライムに挑むには時間がなかったとは言え、アクセルを回すだけで進む原付には違和感を覚えていた。

ヤクスギランド

同じショップで原付から自転車に乗り換えて、翌日は夜明け前に出発。この日は時計回りに屋久島を走り、夕方に宮之浦港から高速船で種子島に渡る予定であった。まずは、宿の人にお勧めされたクリスタル岬で日の出を見る。これは本来とは逆方向で、都合2時間ほどの回り道になった。その後は屋久島の南側を西に向かって走る。次第に気温が上がり、汗ばんでくる。さすが南の島だ。

クリスタル岬

屋久島の南側では交通量は少ないものの、道は狭く自転車レーンは少ないので要注意。しかも常にアップダウンがあり、海岸線から離れた道が続くので少々退屈。そびえ立つ険しい山々が屋久島らしい風景だろうか。小さな川がいくつもあり、横切るたびに聞こえる騒めく水音が心地よい。小さな島ながら雨が多く九州最高峰となる山岳からの急流だ。この水力発電で屋久島の電気を賄っているそうだ。

途中に休憩所やコンビニなどは少ないものの、小さな商店が時折あり、親切に周辺の事情を教えてくれる。やがて屋久島の西側になって道は海岸沿いになり、爽快な景色が広がる。打ち寄せる波と青い海、水平線上にはお隣りの火山島、沖永良部島も見えてくる。これでこそ島ライドだ。気分が晴れやかになってくる。そして岬の公園でランチ休憩、近くで買い込んだ食材を広げる。

ここで驚愕の事実に気が付く。早朝の回り道の後、3時間半ほどで35kmしか走っていないのだ。時速にして僅か10km。一方、目的地の宮之浦港まで46kmで、船の出航まで4時間しかない。同じペースでも4時間半はかかる。しかも、この後は急勾配の交通の難所、西部林道が20kmに渡って続いている。半日走って疲労もたまりつつある。気合いヤンキーではないから、当然間に合わない。

では、どうするか? タクシーを呼んでも自転車2台は乗らない。通りかかった軽トラックは交渉する機会を逸してしまう。だが捨てる神あれば拾う神あり。ショップまで戻ればバンで自転車を乗せて送ってくれると言う。喜び勇んで来た道を引き返す。ほぼ同じ距離を今度は2時間半で走破。この時ばかりは気合いでなんとかした。港までは30分、出航まで30分を残し、ゆっくり自転車を輪行袋に収める。

このように屋久島一周の8割、ヤクほぼイチ約80kmを自転車で挑むつもりが、南側の35kmほどを往復することになった。また、初日の原付はともあれ、2日目のバンには感謝せざるを得ない。さらに種子島から戻った最終日はレンタカーで白谷雲水峡に向かった。こちらは道なき道をよろめきながら歩く。こうして屋久島では多様なモビリティに接し、万能ではない自転車を補完することになった。

白谷雲水峡

【追記】「鹿児島の離島を巡る (2) 種子島ライド」を公開しました。(2023.03.15)

3 comments

  1. 沖永良部島ではありませんよ。
    口永良部島です。

    1. ほんとだ、間違ってました。修正します。ありがとうございました!

本武秀一 へ返信する コメントをキャンセル

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