高知の川と海を走る (3) 黒潮ライド

高知でのライド、初日の四万十川、翌日の仁淀川に続き、最終日となる3日目は高知市南部の海岸道路、黒潮ラインを中心に走った。まず、セントラル・フットサル・パーク四国にてロード・バイクをレンタル。アルミ・フレームのエントリー・グレードながら、軽い走り出しに笑みが浮かぶ。快晴、温暖、微風と天候も良く、素晴らしい一日になりそうな予感。

自転車を借りた高知市の中心部から海までは少々距離がある。部分的には独立した自転車レーンがあるものの、市街地は交通量が多いので走行には要注意。やがて微かに潮騒が聞こえたと思うと、突然に海が現れる。ここからは東へ西へ直線道路が続く黒潮ラインだ。自転車レーンが確保されているので安全に走行できる。ただ、防潮堤のコンクリート道路に凸凹が多いのは残念。

雄大な太平洋を眺めながら自転車に乗るのは爽快極まりない。この日は海も風も穏やかで、柔らかな潮風に吹かれながらペダルを回す。道路の向こうは砂浜で輝く海へと続いている。ここばかりはファット・バイクで波打ち際を走りたいところ。西は春野漁港に至り、巨大な円形プールがいくつも並ぶ海藻を養殖所に出会う。ゆっくりと回転する撹拌器がバトン・ホイールのよう。

次に東に向かい、同じく海岸線道路を快走する。同じ風景でも爽快だから長い距離も苦にならない。しかし、景勝地、桂浜を前にして道は高台に乗り上げる。急勾配にして道は狭くて交通量が多い。自転車レーンがない区間もある。対岸に渡る浦戸大橋はさらに酷く、自転車では危険を感じるほど。それを乗り越えて、遅めのランチは自分で藁焼きする鰹のタタキ。見事なツーリスト向けの演出。

その後は高知新港に立ち寄って帰路につく。市街地に近づくにつれて道が混雑する。ただ、Appleマップが示したルートは幹線道路を避けて走り易かった。時間の余裕があったので、最後に沢田マンションに立ち寄る。素人が独自に建てた鉄筋コンクリート建築として「日本の九龍城」とも言われが、清潔で有機的な佇まいは魅力的。住人の方々は気さくで話を伺うこともできた。

沢田マンション

ところで、初日に足摺岬に向かう途中で巨大な建造物に驚いた。聞くと津波避難タワーだと言う。翌日は黒潮町にある日本最大級の高さ25mものタワーも訪れた。何本もの太い鉄柱を組み上げた堂々たる威容。上部は方舟として荒波に乗り出しそう。建設費約6億円で収容人数は230人。一人の命を260万円で救えるわけだ。階段で最上階まで上がることができる。スロープでヒルクライムをしたい。

黒潮町の佐賀地区津波避難タワー

黒潮ライン沿いにも津波避難タワーがあり、何箇所かを回った。高知新港の巨大なコンクリート塊、ケーソンにも驚かされた。沖合に建設中の全長1.300メートルにも及ぶ防波堤の土台。しかも三重防護の第一ラインと言う。高知は防災先進県として有名で、南海トラフ巨大地震と津波に備えて施設から備蓄まで対策を進めているそうだ。のどかなライドとは裏腹に、迫りくる自然の脅威を意識することになった。

高知新港のケーソン

このように3日間にわたって高知の川と海を走った。初日の小雨混じりの天候以外は、全体としては快適で有意義なライドとなった。高知県の「輪旅高知」や観光地ごとのサイクイング情報が充実しており、まだまだ走るべきルートがありそうだ。惜しむらくはロード・バイクのレンタルが少ないことだろう。食べ物が美味しく人々がにこやかな高知だけに、さらに自転車環境が充実することを期待したい。

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