大垣〜新潟470kmロングライド 準備編

「シミュレーションじゃだめなんだよ」

クワクボ先生に言われたこの言葉から全てが始まった。

教員が勢いで言ったのかもしれないささいな言葉でも、学生にとっては大事件である。

シミュレーションをすることで物事が分かった気になっているのかもしれない僕たちは、現実の体験を通してしか得られないものを求め、自転車旅行に出かけることにした。ちょうど大地の芸術祭が開催中だったので、新潟の越後妻有里山現代美術館を目的地に決めた。

旅に出るのは、筆者である大垣在住の情報科学芸術大学院大学修士1年の浅尾と門田である。2人とも自転車での長距離走は初めてだ。

さっそく旅行当日までに準備しておかなければならないことを洗い出し、計画を練ることにした。

  • スケジュール
  • 宿泊先
  • 帰宅方法
  • 装備品の用意

まずは上から、スケジュールについて。

直近で3連休があったので、その期間を利用して大垣から新潟まで行き、芸術祭を観覧できるのでは!と考えていた。調べていくと、3日で新潟まで自転車で行って作品を見て回って大垣に帰ってくるのは不可能だということが分かり、ちょうど3連休前の木・金は授業がないので木曜日の昼から出発することにした。

大垣から北東方向に山を越えて新潟に行く道のりは難しいと判断し、できる限り山を超えないで済むように、日本海側から回って新潟に行く道を選択した。総距離はおよそ470km。

以下が旅行前に決定したスケジュールである。

10/6(木)1日目 12:00に大垣出発〜鯖江周辺 ネットカフェ 6時間30分 112km

10/7(金)2日目 鯖江周辺〜金沢駅周辺 ゲストハウス 5時間50分 108km

10/8(土)3日目 金沢駅周辺〜直江津駅周辺 ネットカフェ 10時間50分 185km

10/9(日)4日目 直江津駅周辺 ネットカフェ〜越後妻有美術館 3時間30分 60km / 越後妻有美術館〜ゲストハウス長岡街宿 2時間33分 41km

10/10(月) 午前中:越後妻有美術館 / 午後:長岡造形大 / 車で帰る

今見返すと、狂気のスケジュールだ。3日目とか怖い。1日の走行距離を183kmに設定するなんて。宿泊先は費用を抑えるために、ゲストハウスかネットカフェに泊まる予定で計画を組んだ。10/10(月)の「午後:長岡造形大」というのは、浅尾の学部時代の恩師がいらっしゃるということで、長岡造形大学に挨拶に行く。

次に、帰宅方法について。新潟からの帰りも自転車の場合、全体の旅行日数がかかりすぎて大学院の授業が始まる前に大垣に到着することは不可能である。同じ修士1年の塩澄祥大と森田明日香に新潟までトラックで迎えにきてもらい、自転車を積んで大垣へ帰ることにした。

ここまで一通り予定を組んだ上で、必要な装備品とスケジュール内容について確認するため、赤松先生に相談をした。僕たちが費用を抑えて旅をしたい旨を伝えると、様々な道具を一式貸してくださった。(ありがとうございました!)

  • スマホホルダー
  • リアライト
  • ドリンクホルダー
  • ヘルメット
  • フロントバッグ
  • サドルバッグ
  • パンク修理キット
  • 電動空気入れ
  • ジャケット
  • レインコート
  • サドルクッション
  • リアキャリア
  • リアバッグ
  • パニアバッグ

また、普段運動をしない僕たちがこの旅を乗り切るため、旅の計画と同時にトレーニングを開始した。最初は苦しいが、徐々に筋肉を痛めつけることが快楽へと変わっていく。バイクの負荷を少しずつ増加させながら、平日は毎日最低30分はバイクを漕ぐようにした。お手軽に自分自身の成長を感じられるのは、筋トレの醍醐味だ。

大垣体育館のトレーニング室は1回150円で使える!

こうして着々と準備が進んでいった。

旅行前日の晩は、留学生と休学していた同級生の歓迎会が開催されていた。その横で、僕らはママチャリを分解していた。ガヤガヤと騒いでいる中で、ガチャガチャと手を動かす。事前にタイヤのチューブ交換を練習するためである。たまに酔っ払った友達が喋りかけてくる。怪訝な顔をして、タイヤを外す。スポーツ用の自転車は上手く外せた。ママチャリは、全然外せない。友達は飽きたのかどこかにいった。遠くから楽しそうな喋り声が聞こえてくる。初めてみる道具を使って、頑張って器用にチューブを外そうとする。

学部時代に大阪にいた頃を思い出す。自転車屋さんが近所にあって、そこで自転車を買って、パンクや空気抜けになると持って行った。手の皺がくっきりと刻まれたおじいさんが、いつも小慣れた手つきで自転車を直していた。魚を捌いているみたいだった。カラカラと回る車輪からチューブを出して、ブクブクと水に沈めて、穴が空いているか確認する。穴が空いていたら、ハンマーでカンカンとシールを打ち付ける。すごいなぁと思いながらよく見ていた。こうやって、手を動かせたら楽しいだろうなと思っていた。

『なぁなぁ』

また友達が話しかけてくる。あの時の手の動きを真似して、タイヤを外し始める。ガヤガヤとしていた周りの音は小さくなる。今はガチャガチャと音を鳴らして、チューブを外す。友達は静かに車輪を見ている。大阪の光景と同じだった。

次回はついに大垣を出発。

大垣〜新潟470kmロングライド道中編1日目の更新は11/27。記事全体の構成は、準備編、1日目、2日目、3日目、4日目(振り返り+まとめ)の5つからなる。

One comment

  1. 大変面白い記事でした。
    次の自転車道中編が楽しみです。

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