君がくれたグッドライフ、あるいは答えのない問い

クリスティアン・チューベルト監督によるドイツ映画「君がくれたグッドライフ」(2014)は、妻や友人たちと自転車で旅をする、いわゆるロード・ムービー。そのタイトルやポスターは家族と仲間に感謝!人生最高!と言わんばかり。甘ったるい日本語ラップがタイトル・バックに流れそう。だが、内容はまったく違う。原題は「Hin und weg」、「行きて帰らぬ」といった意味だろうか。

映画は主人公がエアロバイクを漕ぐシーンから始まる。妻や仲間たちと年に一度のツーリングに出かける練習ながら、僅か14kmで息も絶え絶え、先が思いやられる。それでも頑丈なツーリング自転車に前後パニアバッグを備えて出発。ある者はラジカセを積んだトレーラーを引き、タンデム自転車に乗るカップルもいる。馬鹿騒ぎをしながら、美しいヨーロッパの丘陵や街を駆け抜ける。

途中で立ち寄った実家で、主人公は難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、余命僅かであると告白する。そして旅の目的地であるベルギーで安楽死の処置を受けると言う。彼が住むドイツでは法律上認められないからだ。最後に妻や仲間と過ごして病気を忘れたいと願うが、それは我が儘だと妻は悲嘆する。誰一人納得できないものの、それでも最期を見届けることを約束して旅を続けることになる。

このようにして、旅の最初に割り当てられた課題が伏線を巡らしながら、一行は500数十kmに渡ってペダルを漕ぐ。自らの力で自らの死に向うには、自転車は相応しい。症状が進行して体力が低下し、途中からは妻と共にタンデムに乗る。しかし最後は、期日に間に合わせるために自動車に乗るのは皮肉としか言いようがない。そして最終目的地の海岸に辿り着き、砂浜で海の向こうを静かに見やる。

この映画で答えのない葛藤が描かれたように、積極的安楽死は倫理的にも感情的にも単純には考えられない。何年か前に気楽な自転車映画と思って観たものの、簡単に紹介することができないでいた。それでも今回取り上げたのは、スタイリッシュな安楽死マシンSarco(サルコ)記事を見かけたからだ。死のクリティカル・デザインに対して、これもまた答えはないけれども、考え始める必要がありそうだ。

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