オンラインと実会場、2つのサイクル・イベント

新型コロナウイルスの猛威がとどまらない昨今、自転車や関連グッズの展示会であるサイクル・イベントも大きな影響を受けている。昨年以来、多くのイベントが中止になった。屋外であっても多くの人が密集するイベントは感染リスクが高いからだ。そのような状況下で先月はオンラインで、今月は実会場で開催されたイベントに参加した。ニューノーマルのイベントは如何に在るべきだろうか。

サイクルモードオンライン2021

まず、サイクルモードオンラインは2021年3月5日から3月31日までWEBサイトとしてオンラインで開催された。入場料(閲覧料)は無料で、名前やメール・アドレスなどを入力して来場者登録する。典型的な「商品(サービス)が無料であれば、あなたが商品なのだ」商法だ。もっとも、これまでの実会場での開催でも、試乗などで個人情報が出展者に渡っていたので、大差はないのかもしれない。

来場者が展示会出展ブランドページで資料ダウンロード、動画の再生を行った場合は、来場者情報のうち「お名前」「メールアドレス」が出展者へ提供されます。

サイクルモードオンライン2021の来場者登録時の説明

WEBサイトの様子は現在のトップ・ページの掲載に留めておく。これは有料サイトだから…と言うのは体裁の良い言い訳に過ぎない。あまりにも内容が希薄で構成が貧弱だったので、スクリーンショットを撮って記録するのも憚られたからだ。このイベントは当初2月開催予定であったのが1ヵ月延期されていることからも、出展者の取りまとめやコンテンツの制作に苦労したであろう事情が伺える。

サイクルモードオンライン2021のトップ・ページ
(2021.04.21取得)

実際にも各出展者のコンテンツは、既存のWEBサイト以上の内容はなかったようだ。一部しか閲覧していないので断言はできないが、オリジナル・コンテンツを含めて急ごしらえの稚拙な内容と感じた。さらに問題なのはサイトの構成やナビゲーションがおざなりで、情報デザインが貧弱だったことだろう。興味のある情報に辿り着くことができず、早々にサイト離脱してしまったわけだ。

サイクルモードオンライン2021の出展募集要綱よ
(2021.04.21取得)

名古屋サイクルスポーツデイズ2021

実会場でのイベントが敬遠される中で、名古屋サイクルスポーツデイズは2021年4月17日と18日にシッピング・モールの駐車場で開催された。かつて東京や大阪で開催された同種のイベントに比べると、会場の規模は小さく、出展ブースも多くはない。特に試乗コースの距離が短く、幅が狭くて単調なのが残念。規模に応じてか、入場料は前売り1,000円、当日1,300円と安く設定されていた。

名古屋サイクルスポーツデイズ2021の試乗者登録の様子
(360°全天球写真をリトル・プラネット加工)

会場では入場待ちや試乗登録で長蛇の列となり、人気のあるブースや特設ステージ周辺は混雑する。明らかに対人距離が確保されていないが、主催者が注意喚起するわけでもない。屋外だから換気は問題なく、大声で話さないのであれば問題ないとの判断だろうか。また、ほとんどの人はマスクを着用していたものの、すでにワクチンを接種をしたのか、中国人らしき女性はノー・マスクであった。

名古屋サイクルスポーツデイズ2021の出展ブースの様子

ともあれ、以前と同じ雰囲気に懐かしさを感じる。気になっていた自転車の色や重さを確かめ、試乗して乗り心地を確かめる。偶然見かけた製品に驚いたり、スタッフと雑談して耳寄り情報を得る。といった具合に楽しい時間が流れる。興味を持った知人に同行を勧めて、自転車ライフの第一歩を踏み出してもらうにも最適だ。会場の情報デザインはお粗末だが、走り回ればなんとかなる。

名古屋サイクルスポーツデイズ2021の会場マップ
(索引化されていないので紙では役に立たない)

サイクル・イベントの虚と実

仮想(バーチャル)とは本来「実質的に同じ」ことを指すが、オンライン体験は実際の体験に遠く及ばない。それでもオンライン・ショッピングが盛んなのは、その利便性が実空間を上回るとともに、実体験の欠如を補う仕組みを工夫しているからだ。一方、自転車関連は本格的なオンライン化に対応していない。そこにパンデミックが到来して準備不足が露呈したように思える。

サイクルモードオンライン2021の出展者
(2021.04.21取得)

一方、実会場での自転車イベントも旧態依然としている。行政上の制限が緩和されたので、最低限の感染対策を行って開催したに過ぎないからだ。これでは再び状況が悪化すると開催できなくなってしまう。自転車はリアルな身体とリアルな空間によって成立する。その何ものにも代え難い感覚を提供する場であるイベントを、激変する新しい時代に対応させる必要がある。

名古屋サイクルスポーツデイズ2021で試乗したT-Trike

未来予想は難しいものの、今後も大規模な集中型のイベントは難しいだろう。それは感染予防だけでなく、人口減少による過疎化の問題でもある。そこでバーチャルとリアルの相互補完が重要になるに違いない。例えば、サイクル・イベントは小規模で分散的になり、多拠点での巡回開催が考えられる。それは満員電車の欺瞞に気づいた今だからこそ、自然で望ましい姿として歓迎されるのではないだろうか。

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