Theta Z1で360度全天球映像のライブ配信

360度全天球カメラの多くは、映像のネットワーク配信が可能だ。この時、HMDを用いれば、鑑賞者は任意の方向を見ることができる。そこで自転車に乗りながら映像を配信すれば、鑑賞者は自宅に居ながらにして自転車に乗る体験が得られる。ここではRicohのTheta Z1(カメラ)とモバイル・ルータ、それにOculusのOculus Quest 2(HMD)を用いて、リアルなバーチャル・ライドを試してみよう。

Theta Z1(左)、モバイル・ルータ(中央)、Oculus Quest 2(右)

Theta Z1(以下Thetaと略す)はWireless Live Streamingプラグインによってライブ配信を行う。このプラグインはMacのRicoh Thetaアプリでインストールする。これはダウンロード・サイトでは基本アプリと記載されている。次にThetaをUSBケーブルでMacに繋いでプラグインをインストールし、利用できるように設定する。ちなみにプラグインは同時に3種類までインストールして使用できる。

Ricoh Thetaアプリでのプラグインの選択

ライブ配信のプラットフォームとしてYouTubeを用いる場合は、MacのSafariでYouTubeを開き、右上の作成ボタンから「ライブ配信を開始」を選ぶ。これでYouTube Studioが開くので、ライブ配信の設定では「360°動画」をオンにして、タイトルなどを配信内容に応じて設定しておく。他の項目はそのままで構わないが、通信環境や配信目的に応じて「ライブ配信の遅延」を設定するのが良いだろう。

YouTube Studioでのライブ配信設定

次にThetaとiPhoneはモバイル・ルータに繋ぐ。iPhoneのThetaアプリでは無線LANクライアントモードで接続する。そしてカメラ設定のプラグインでWireless Live Streamingを起動して、配信設定のサーバURLとストリーム名/キーをする。これはYouTube Studioからコピーしてペーストすれば良い。最後に「配信開始」をタップすれば、Thetaの映像がYouTube Studioに送られて配信される。

Thetaアプリでのプラグインの起動
ライブ配信の設定

以上の手順でライブ配信が開始されるので、鑑賞者にライブ配信のリンクを知らせよう。鑑賞者は通常のYouTube動画と同じようにライブ映像を見ることができる。これは360度映像なので、対応しているブラウザやアプリであれば映像のドラッグや、デバイスの向きを変えることで、お望みの方向を見ることになる。ここまでの設定と処理を概念図で表せば、以下のようになる。

今回の配信の概念図

さて、実際のライブ配信の映像は、頻繁に途切れて滑らかに見えない。また、低遅延の設定でも10秒程度の遅延が生じていた。映像が4K(3840x2160ピクセル)サイズなので、映像の処理や通信の負荷が高いのだろう。Thetaはスタビライズ(手ブレ補正)能力が高くないので、映像の揺れが通信量の増大を招いているかもしれない。なお、モバイル通信は4G(LTE)で中程度の速度であった。


ライブ配信のアーカイブ映像

映像の品質はともあれ、Oculus Quest 2を用いてライブ配信を見るには、YouTubue VRアプリをインストールして起動するだけで良い。配信者のチャンネルを開けば、動画の最初にライブ配信があるので、これを開くと自動的に360度映像として表示される。右でも左でも、上でも下でも好きな方向を向いて周囲を見渡せる自由度の高さはHMDならではなので、機会があれば体験して欲しい。

Oculus Quest 2のYouTube VRでの映像の選択

今回のように配信者が自転車に乗っていれば、HMDを装着した鑑賞者は同乗して走っている気分になれる。これは出掛けることができない遠方の地をライドしたり、身体が不自由な人が自転車に乗ることに繋がる。いずれも擬似的であるとは言え、普段にはない新鮮な体験になるはずだ。新型コロナウイルス禍が続くだけに、このような利用は今後ますます重要になるに違いない。

既に新型グループ・ピクニックなどでも、Zoomによるミーティングに360度映像のライブ配信を取り入れている。ただし、これらのサービスの統合は初歩的な段階なので、360度カメラでミーティングに参加するか、ライブ配信で音声会話ができるようになって欲しい。また、360度映像は広帯域を必要とするので、5G通信が普及して精細な映像を遅延なく配信できることが急務だ。


新型グループ・ピクニック 2020 Autumnでの360度映像のライブ配信

このように360度映像のライブ配信には課題もあるものの、低コストで実用的に運用できるので、ぜひ挑戦して欲しい。ただし、HMDでの視聴で気分が悪くなれば、ただちにHMDを外して静養しよう。これはVR酔いと呼ばれ、誰にでも起こる可能性があるので注意したい。もちろん、13歳未満など低年齢でHMDを使うことは推奨されていないので、これも避けるべきだ。

【追記】本文で紹介できなかった360度映像のライブ配信に関するメモを、以下にまとめておく。(2020.12.28)

  • Wireless Live StreamingプラグインはTheta Vでも利用できる。
  • YouTubeのライブ配信の設定は、iPhoneのYouTubeアプリではできない。またiPhoneのSafariやChromeでのYouTubeサイトでもできない。
  • YouTubeのライブ配信のストリーム・キーは再発行するまで有効であり、同じキーで配信を繰り返すことができる。従ってYouTubeでのライブ配信設定後は、Macは不要になる。
  • Thetaのシャッター・ボタンでライブ配信の開始と停止ができる。従ってThetaのライブ配信設定後は、iPhoneは不要になる。
  • Insta360 One RInsta360 One X2などはiPhoneのInsta360アプリを使ってライブ配信を行う。ただしGoogleがInsta360アプリをブロックするので実際には実行できなかった。
  • Insta360 One RやInsta360 One Xなどはバッテリーを大量に消費するので30分ごとにライブ配信を停止する。またライブ配信中にはバッテリーを充電できない。
  • GoPro MaxはiPhoneのGoProアプリを使ってライブ配信できるが、これはGoProモード(360°ではない)に限られる。
  • Insta360やGoProなどのモバイル・アプリでYouTubeのライブ配信を行うには、チャンネル登録者数が1,000人以上が条件になる。Thetaは本体で配信するので、この制限を受けない。
  • ライブ配信にはYouTube以外にもFacebookやRTMPサーバも利用できる。

2 comments

  1. 360°カメラをリモートにより効率よく使えないかと調べていたところ、こちらのサイトにたどり着きました。自身もinsta360の端末を購入しトライしてみたのですが、googleがブロックすることを知らず、今回の記事で理解できました。
    プラグインの幅が広いThetaを一度試してみようかと思います。Youtube live 1,000人以上の制限を受けないのも使いやすい気がします。

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