360度全天球カメラで撮影した映像は、対応したHMDで周囲を見回して見ることができる。そこで自転車に取り付けて撮影すれば、自分が自転車に乗っているように感じるだろう。これは自分自身のサイクリングを思い出すのにも良いし、他の人の映像なら訪れたことのない場所を走る感覚が得られる。さらに何らかの事情で自転車に乗れない人にも、擬似的に自転車に乗る体験を提供することができる。
このような映像は上下左右前後とあらゆる方向の映像を収録している。従って同じ4Kサイズでも通常の映像なら精細だが、HMDがそうであるように全天球映像の一部を切り出せば、その解像度は低くなる。そこでより高解像度の映像を得るべく、Kandao社のQooCam 8Kは、その名の通り8Kサイズでの映像撮影が可能になっている。片手で持てる小型機種としては最大サイズだ。
それでは、スタビライズ性能を確認するために、QooCam 8Kを自転車のハンドルに取り付けてタイル敷の歩道を走行してみよう。撮影した映像はQooCamStudioアプリケーションで書き出す。この時にAnti Shakeを選ぶと、路面からの細かい振動が抑えられry。Super Steadyは更に効果が高いが、カーブでの進行方向の変化まで打ち消すのが問題になる。左に曲がれば右を向いた状態になり、不自然だ。
ハンドルに取り付けたQooCam 8Kの映像をAnti Shakで出力
ハンドルに取り付けたQooCam 8Kの映像をSuper Steadyで出力
このようなスタビライズは、カメラをヘルメットに取り付けると悩ましくなる。Anti Shakeでは頭を右や左に振り向いた変化まで抑え切れない。一方、Super Steadyでは頭の振りは吸収されるものの、カーブでの進行方向の変化に対応できない。理想的には頭の振りを抑えながら、進行方向を正面に保って欲しいわけだ。これができるのは本体にGPSを備えたGarmin VIRB 360などに限られる。
ヘルメットに取り付けたQooCam 8Kの映像をAnti Shakで出力
ヘルメットに取り付けたQooCam 8Kの映像をSuper Steadyで出力
QooCam 8Kは8Kサイズの全天球カメラとしては小型であるものの、他のハンディな全天球カメラに比べると一回り大きく、かなり重量感がある。従って、ヘルメットに載せて長時間行動する気にはなれない。また、内蔵ファンで内部を冷却するほど負荷の高い映像記録を行なっている。ただし公称90分間と実用的な稼働時間を確保しているのは優秀と言える。
肝心の8Kサイズの映像は、大き目のレンズとセンサーを備えていることもあって、HMDで見ても鮮明であり、臨場感がある。Insta360 One Xの5.7K映像と見比べると、細部での破綻が少ないことが分かる。もっとも8K映像を適切に再生するには、HMDの表示解像度と処理能力が高くなければならない。例えば、Oculus Goでは8K映像を適切に扱えないので、Oculus Quest 2などが必要になる。
【ダウンロード】QooCam 8K(8K/30fps, 120Mbps, 2.61GB)
QooCam 8K(8K/30fps, 200Mbps, 4.34GB)
Insta360 One X(5.7K/29.98fps, 129Mbps, 2.92GB)
このようにハイスペックな再生環境が要求されるものの、8Kの全天球映像は高い訴求力がある。相応のHDMが用意できるなら、ぜひ試して欲しい。右でも左でも自由に振り向けるし、あろうことなら真後ろを向いたまま走ることもできる。ただし、いわゆる「VR酔い」には注意が必要。気分が悪くなれば、直ちにHMDを外して休憩しよう。