[ESSAY] 貸自転車ショートストーリー (7)

今世紀に入り、日本の“自転車活用モデル20都市”では、単一の駐輪場でのレンタサイクル実験が繰り返されていた。

ところが、2007年に始まった多数の駐輪場を持つパリ・ヴェリブ方式が、都市交通手段として認められた。この方式は世界の大都市に広まり、日本でも採用された。

━15年になり、中国でヴェリブを一段とバージョンアップした、新都市型レンタサイクルが登場した。

わずか2年ほどで、北京や上海などの国内40~50の大都市で、配置台数2.500万台、利用者2億人を超える空前の規模で急拡大、世界にも進出を開始した。

━何故、これほどの急成長ができたのか?

第1に自転車を都市交通手段として見直す世界的気運があり、中国でも交通渋滞解消と環境対策の必要性があったこと。

第2に、中国では30年にわたる計画経済の成果として、資本の蓄積とIT関連企業の勃興があり、多くのスタートアップ企業が生まれていた。

第3に、世界で急速に広がったシェアリングエコノミー(シェア経済)の一つとして、自転車が考えられたこと。

これ以降、中国式レンタサイクルは、「シェア自転車」(シェアリングサイクル・シェアバイク)と呼ばれるようになる。

第4に人口13億人もの膨大な個人需要があり、併せてIT機器を操るミレニアル世代(1980~90年代生れ)が、消費の中心になっていたこと。

━シェア自転車についての中国独自の特性もあった。

第1にスマホを活用する独自のシステムを考案したこと。GPSで街中の空車を探してスマホで開錠・施錠、乗捨ても自由、代金もスマホ決済であり、利便性が高かった。

第2に特定駐輪場所が不要のため、人手や設備投資が少なかったこと。(厳密には路上に指定場所があった)

第3に利用料が30分17円と安く、無料キャンペーンも多く、利用しやすかった。

第4に70~100社ものスタートアップ企業が過当競争をしたため、先行投資の規模が桁外れになり一時的な活況を呈したこと。

第5に中国は年間8.000万台の世界最大の自転車生産国であり、調達が容易でコストも安かった。

━折から中国経済は絶好調、国民は投資好き、新交通手段としての将来性などを背景に、シェア自転車はシェアリングエコノミーの雄として、限りなく拡大するかと思われた。

だが、“中国の新4大発明”とまで言われたシェア自転車には、とてつもなく大きな落とし穴が待ち受けていた……。

詳しくは、情報サイト「自転車物語WEB」の掲載記事「レンタサイクル物語9 中国式シェア自転車 “栄光の時代”」参照。

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