スマートウォッチ、手首の憂鬱

間もなく10月、秋らしく涼しい季節となると、半袖ではなく長袖になる。これから再び半袖になる初夏を迎えるまで、自転車乗りのとって悩ましいのはスマートウォッチだ。何しろ、空気抵抗を最小限に抑えたいサイクリング・ウェアは、手首が絞ってあるからだ。袖口が肌に密着しているので、スマートウォッチを見るために袖を捲くるのは難しい。ペダルを漕ぎながらであれば、危険極まりない。

そこでお薦めしたいのはEdgeGear社のSHIFT。さまざまな種類のスマートウォッチを手首ではなく、親指寄りの手の甲に付けることができる。Kickstarterでのビデオで利点とされていたのは、手首を返してスマートウォッチを見る必要がないことだ。ランニングなら振り上げた手を見れば、サイクリングならハンドルを握る手を見れば、そこにスマートウォッチがある、というわけ。

しかし、Apple Watchに関しては、それは嘘だ。通常は画面がスリープしているからだ。これを解除するには、手首を返すか、画面をタッチするか、クラウンやボタンを押さなければならない。スリープを禁止する設定はないし、あってもバッテリー消費が大きくて実用性を損なうだろう。つまり、ビデオのように視線を移すだけで、情報を一瞥できるわけではない。そこにはApple Watchの黒い画面があるだけだ。

一方で、手首を絞ったサイクリング・ウェアでもApple Watchが使えるのは確かだ。背面のLED投射による心拍測定も正しく動作する。特にSeries 3はワークアウト中だけでなく、常時定期的に心拍測定をして健康管理するので、これは重要だろう。手の甲にあっても使い勝手は悪くない。ただ、手の軸に対して斜めに装着するので、スリープから復帰させるには、大袈裟に手を返す必要がある。

このように手首ではないバンドは、SHIFTの他に例がないだろう。それほど独創的であり、特に長袖サイクリストの必需品と言える。もっとも、やがては寒さが厳しくなる。サイクリング用の手袋は風を巻き込まぬように、手首が絞られている。かくして、SHIFTが活躍する短い季節が終わり、再びサイクリストの憂鬱がやってくる。つくづく、スマートウォッチには縁がない。

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