名古屋のシャレオツ自転車屋さんと言えばCirclesが有名で、そこで教えてもらった姉妹店Culture Clubは異色ながらも素敵な店舗。そのユニークな視点とセンスの良さに驚かされる。場所は大須観音から南西に500mほど離れた落ち着いた地域。天井が高く正面が広く開かれた店構えは、肩肘を張らないたたずまい。倉庫のような、アトリエのような、そんな雰囲気。今年の1月から営業を始めたそうだ。
中古屋さんと言っても、完成車は店頭には数台ある程度。その他はフレームやホイールからスプロケットやタイヤに至るまで、所狭しと自転車のパーツが置かれている。だが、不思議と乱雑な印象を受けない。これらのパーツ類も大半が中古品だそうで、値段が安いものが多い。新品やビンテージっぽい未使用品もあって、新旧取り混ぜた品揃え。自転車用のウェアやバッグ、それに雑誌なども置かれている。
何百何千とパーツがあるが、ふと疑問が湧いてくる。これ買ったとして、どうするのか?と。その答えは店舗の奥にあった。そこは自転車工房になっていて、整備用工具がスタンバイしている。しかも、お揃いのUNIORのツール群だ。この工房は時間貸しされており、表で買ったパーツを裏で組み立てることができる。腕に覚えがある人なら、入り浸ってしまいそうな作業環境だ。
ただし、パーツとツールがあるとしても、モノだけでは困ってしまう。そこでCulture Clubでは定期的にメカニック・スクールを開いている。パンク修理から車輪の揺れ取りやハブの調整まで、多岐にわたるスキルが習得可能。有償のアドバイスも得られれば、修理や組み立てを依頼することもできる。中古品を組み合わせて自分の自転車を仕立てる人もいるそうだ。店頭のハイセンスなイラストと説明が楽しい。
個人的には筆者は完成車主義者だ。自転車はメーカーがフレームやコンポーネント等のベストな組み合わせを提案すべきだと考える。それはクローズド・システムたるMacやiPhoneの美学でもある。パーツの組み合わせを考えるのは、自作PCの世界。それは面倒かつ無駄だと思う。だから、Culture Clubは縁遠い世界だが、なんだか楽しそうと思ってしまう。油にまみれるのは嫌なのに、手を出しかねない。
中古パーツ販売とDIY工房の自転車ショップが、アキバのPCショップっぽくないのは何故だろう?それはPCヲタクが室内引きこもりで、自転車野郎が野外駆け回りだから、だけではない。おそらくPCはツールだが、自転車はメディアなのだ。いや、逆かもしれないが、その名が示すように、ここではある種の文化が生まれ、育もうとしている。そうでなければ、単なる新品販売で必要十分だから。
そのような雰囲気に勇気づけられて、少々特異な希望を話してみた。初めてにも関わらず、どんどん話が進み、2回目の訪問では筆者の自転車を持ち込んで、具体的な検討に入っている。自転車にまたがっているのがCulture Club店長の横山誠さん。メジャーで計測しているのがShin・服部製作所のフレーム・ビルダー服部晋也さん。何を目論んで、どのようにでき上がるかは、後日のお楽しみ。