ジアンルカ・ジミニの自転車図鑑

ボローニャ在住のグラフィック・デザイナー、ジアンルカ・ジミニ(Gianluca Gimini)のプロジェクト「自転車図鑑(Velocipedia)」は、愉快であると同時に興味深い取り組みだ。これはフォトリアリスティックな自転車のドローイング集で、少し変わった不思議な自転車が並んでいる。いや、少し変わったどころか、実際に乗ると壊れるか、前に進まないに違いない。そんな自転車ばかりだ。

このプロジェクトの種明かしをすると次のようになる。まず、知人に男性用自転車をスケッチとして描いてもらう。これは実際の自転車を見ることなく、記憶だけを頼りに描く。次に、このようなスケッチから、興味深い自転車を可能な限り忠実に、リアルに見えるように丹念に描く。いずれもコンピュータを使ったベクター・グラフィックスで、3Dモデリングではないようだ。

これらは奇妙で不完全な自転車だから、思わず笑うか困惑しそうだ。だが、作者は面白可笑しい間違いとして捉えているわけではない。これは一人のデザイナーでは不可能である多様性であり、クラウド・ソーシングの創発であり、エラー駆動型のドローイングだと言う。確かに、これらの自転車から触発されるアイディアは多々ありそうだ。何に注目して何を間違ったのかを考えることも有益だろう。

作者の考察によれば、これらのスケッチにはジェンダー的偏りがあると言う。例えば、チェーンが前輪または両輪にかかっているスケッチの90%は女性によるものだった。男性はチェーンを後輪にかけるが、必要以上に複雑なフレームを描くことが多いらしい。また、75%の人は自転車の左側を描いたそうだ。人の記憶にある自転車は左向きであり、以前の考察の論拠に加えたい。

ちなみに、いくつかのドローイングはオンラン・ショップで販売されている。50cm x 50cmのプリントで25ユーロ(約3,200円)だ。しかし、いくつか購入しようとしたところ、日本へは発送できないと表示されて発注できなかった。一方、リアルなドローイングは無理だとしても、記憶に基づくスケッチなら誰でもできるはず。お問い合わせから傑作や迷作を送っていただけると有り難い。

なお、記憶によって絵を描くことは、ナンシー関が「ナンシー関の記憶スケッチアカデミー」にまとめている。これらは雑誌のコラムで募集したものであり、全国から寄せられた多数のスケッチで構成されている。数点収録された自転車には、日本とヨーロッパの感性の違いが浮かび上がる。他にもパンダや大仏、ギターやウルトラマンなどお題は多岐にわたり、絶妙のコメントが楽しい。

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