自転車界における左と右

ふと気になって、自転車の写真をWEB検索してみた。すると右向きで、つまり右に進む方向で撮影された自転車が多かった。実際に「bicycle」の画像検索結果を数えてたところ、右向き294件、左向き73件、と約4倍もの多さであった。「自転車」、「ママチャリ」、「road bike」など検索語を変えても、右向きが多いことには変わりない。念のためにアカウントはログアウトして、キャッシュも空にしている。

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これは何故だろう? その理由として思いついたのは、右向きであればクランクやギヤがはっきりと写るので、自転車の全体像が把握できるということだ。これは商品説明の写真として必要なことだろう。ロード・バイクやマウンテン・バイクのように、コンポーネントによってグレードを強調したい場合にも有利に違いない。実際にも、そのような商品と思われる写真が多く見られた。

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他にも、横に立つ人よりも自転車を目立たせたい、とか、右側通行の欧米で歩道側から撮影すると自転車は右向きになる、といった理由も考えられる。bicycleの検索では人が写っていない写真が多かったので、検索語を「bicycle woman」と変えてみる。この場合は右向き171件、左向き150件と拮抗し、正面向きなどが増えた。つまり、人との関係においては右左の違いはない。やはり商品訴求性だろうか。

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一方で、Emojipediaで調べると絵文字(emoji)は、ほぼすべて左向きであった。絵文字は商品説明ではないが、それにしても極端に偏っている。もちろん、機種依存性を減らすために、同調圧力が働くことは想像できる。ただ、絵文字デザイナーがそうであったように、左向きの自転車が自然に思える。筆者が自転車の写真を撮ると、ほとんどが左向きだからだ。逆に先のWEB検索結果に違和感を覚えてしまう。

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さらに「横に立つ人よりも自転車を目立たせたい」と考えるのも、自転車の左側に人が立つことが暗黙の前提であったわけだ。自分自身を含めて周囲の誰もがそうしているし、自転車の左側で乗り降りするのが安全だからだ。車道では自転車の右側をクルマが走るので、自転車の右側に降り立つとクルマに接触しかねない。それでは車両が右側通行である国では、人々は自転車の右側に立つのだろうか?

しかし、記憶を辿っても自転車の右側で乗り降りする人は思い当たらない。数人の海外在住の知人に尋ねても、どの国では誰もが自転車の左側に立つとの返事だった。さらに、キックスタンドを画像検索したところ、左右のない2本足スタンドを除いて、すべて左側スタンドであった。自転車の乗り方を教えるサイトや自転車を押し歩いている写真を検索しても、やはり自転車の左側に立つの場合がほとんどだ。

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つまり、世界中の誰もが自転車の左側で乗り降りをしている。日本やイギリスなど左側通行の国は僅かなので、大半の国では自転車を降りる側が自動車に接する危険な状態だ。自動車であれば、右側通行の国と左側通行の国とで運転席やレバーの位置が異なる。同じように自転車のサイドキックの位置を変えれば良さそうだ。しかし、実際には世界中で自転車は同じ形状だ。

右側通行・左側通行とは関係なく、右利きの人は自転車の左側から乗り降りするのが自然なのかもしれない。全体の10%前後と言われる左利きの人が我慢していると仮定すれば、利き手、利き足として自転車の左側に乗り降りすることを説明できる。身体と密接に関連する自転車では、身体の特性が法令や規則以上に重要かもしれない。このように自転車界における左と右には、奇妙な偏りと不思議な一致がある。

【追記】Twitterのアンケートで53人の方から回答をいただいた。その集計では「右利き、自転車は左から乗り降り」が89%、「左利き、自転車は左から乗り降り」が5%と、左から乗り降りされる方が合計94%と大半であった。「右利き、自転車は右から乗り降り」は6%、「左利き、自転車は右から乗り降り」は0%であった。(2016.11.21)

left-or-right-on-twitter

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