博士の異常な愛情、または私は如何にして心配するのを止めて自転車を買うようになったか

先日、新しく自転車を買った。自転車を買う時に困るのは、試乗する機会が少ないこと。身体に直結する乗り物だから、大きさが合い、快適な乗り心地の自転車を買いたい。また、屋外、つまり人前に出るのだから、見かけや色合いも大事だ。だから、実際の自転車を目で見るとともに、しっかり試乗したい。だが、これは困難だ。しかも、値段が高い高級な自転車になればなるほど困難になる。

今回買おうとしたのは折り畳み小径車。すでにBromptonを持っているが、ホイールが16インチと小さく、クイック・リリースでないのが難点。このために固定ローラーが使えず、メンテナンスが面倒だった。そこでクイック・リリースの18〜20インチ・ホイールとなると、ほとんどの折り畳み小径車が該当する。つまり、カタログ的なスペックや写真では判断できないので、ショップを回ることにした。

今回訪ねたのは各種自転車を取り揃える大きめの販売店3店と小径車専門店1店。代表的なメーカーは、Bromptonr&m(Birdy)DahonTernTyrellといったところ。いずれの店舗も店頭在庫は多いものの、試乗車となると少ない。メーカーごとに試乗車は2〜3台で、しかも廉価帯がほとんど。これではメーカーごとの雰囲気はつかめても、どの車種を購入するかまでは判断できない。

結果的に購入したのはDahonのVisc EVO。これは試乗した同社のSpeed Falcoの乗り心地が良かったことと、店頭展示されていたVisc EVOの外観の印象が良かったことが理由。折り畳んだサイズはBromptonより二回りほど大きくなるが、折り畳み方がより簡単だったのが好印象。ただ、試乗車のフレームとは材質が異なるので、本当の乗り心地を確かめられていないことに不安が残る。

さて、販売店では値引きなしで価格の1割分のアクセサリーを進呈、納期は2週間程度と言う。「程度」とは何様?と思いつつ、その日は購入せずに帰宅。その夜にAmazonで調べると、同じ車種が2日後のお届けとなっている。しかも値段は10%オフで全色揃っている。これでは比較にならない。当然、ワンクリック。そして翌々日のお昼前に大きめの段ボール箱が到着。正確には36時間少々だった。

折り畳み小径車だからか、ほぼ完成車状態で届けられ、シートポストとペダルを取り付ける。調整箇所はシートの高さだけ。あっけないほどの手軽さで、すぐに走り出すことができた。オンラインで自転車を買う発想はなかったが、これなら悪くはない。いや、このほうが良い。これはいつか来た道。音楽や映画、書籍や衣服、雑貨や家電。販売店=ショールームだが、それすら不要になりつつある。

一方、自転車の販売はまだまだ店舗が主流だ。しかし、店頭には試乗車が少ない。販売スタッフの知識と経験による助言は有り難いが、必ずしも感度は高くない。例えば、今夏登場予定のBrompton純正のE-Bikeを尋ねても、誰も告知すら知らなかった。小径車にはキャリア(荷台)を取り付けたかったのだが、カタログを示された程度。Visc EVO 2017年版には純正キャリア不可と後で知ることになる。

販売店と同様に、メーカーや代理店の流通と情報も、かなり貧弱と言わざるを得ない。日本のDahonサイトには例のキャリアがレイアウトが崩れた状態で放置されている。コンタクト・フォームで問い合わせても自動返信メールだけで、1週間後に再度問い合わせて、ようやく取付不可との返事。もちろん、すでに自転車は届いていて、危うくキャリアまで発注するところだった。

「町の電気屋さん」を見かけなくなったように「町の自転車屋さん」も消滅しつつある。現物を十分に確認できないなら、店舗に立ち寄る意味がない。オンライン販売のみの自転車メーカーCANYONや、品揃えが豊富で安価なオンライン・ショップWiggleなども台頭している。Amazonも自転車に関しては改善の余地がある。昔ながらの自転車販売は早晩立ち行かなくなる。その時に私たちは何を欲するのだろうか?

(表題の元ネタ映画と本稿は内容的な関係はありません)

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