フレームという名の実用空間

自転車の車体の主要部分であるフレームは、素材が何であれ、その内部は空洞だ。空洞だから、何かを収容することができるはず。自転車に乗る時は持ち物を最小限にしたいのだが、ウォーター・ボトルは必携だし、パンク修理用品などをツール・ボトルやサドル・バッグに入れているのが現状。それらをフレーム内に収めることができれば最高。見た目がスッキリするのはもちろん、中身を安全に保護できそうだ。

フレーム内部に収納スペースがあっても、通常はドアがないので出し入れができない。ところが、最初からドア付きの自転車もある。そう、折り畳み自転車のBromptonはトップ・チューブの中程が折れて、内部への出し入れができる。そこでメーカー純正の工具セットBrompton Toolkitだ。これはスパイの小道具のように見事にピタリと収まる。他の工具セットを持っていても、欲しくなるほど完成度が高い。

Brompton Toolkitには8種類のビット交換式のラチェット・ドライバーと、パンク修理のためにタイヤ・レバー2本、紙ヤスリ、応急パッチが入っている。ラチェットとレバーはスパナ(レンチ)を兼ねていて、特に15mmのスパナが有り難い。Bromptonのホイールは15mmのナットで固定さていて、他の自転車では使われていないからだ。なお、Bromptonは後輪部に小型の空気ポンプが標準装備されている。

Bromptonのトップ・チューブのもう一方には、輪行袋が入る。これは純正ではなく、小径車用パーツで有名な加茂屋のAlways-JPなる製品。丈夫かつ薄手の生地で、細長く畳んでフレームに格納する。Toolboxと同様に、内部に入れたことを忘れてしまうが、いざという時にすぐに取り出せるのが嬉しい。突然タイヤがパンクしても、思いがけず電車に乗ることになっても、すぐに対応できるわけだ。

Always-JP(左)と90Lのゴミ袋(右)

ちなみに、工具セットも輪行袋も専用品でなくても構わない。要はトップ・チューブに入るように細長い形状にまとめる。ただし、奥に入り込まず、すぐに取り出せる必要がある。クランプのネジ部分が利用できるので、細くて強度のある釣り糸を引っ掛けると良い。とっておきのミニマル輪行袋は大型ゴミ袋。破れ易いが、なんとかなる。45Lでは小さいので、70L以上が必要。

通常の自転車では、ドア的な機構はフレームの剛性や耐久性が低下する。そこで存在する開口部を利用する。筆者は試していないが、Topeak社はハンドル・バーに収納するチェーン・ツールNinja Cや、シート・ポストに格納する空気入れNinja Pを発売している。シートポスト自体が空気入れになるBiologic社のPostPumpも面白い。果てはメカニカル・ドーピングとしか思えないフレーム内蔵モーターもある。

近年の自転車ではフレーム内に各種ケーブルを通しており、これもフレーム内部の活用と言える。Trek社のMadone 9.9では、ハンドル周りを含めてケーブルが一切見えない徹底した内装化が行われている。さらに電動シフト用のバッテリとジャンクションもフレーム内に置かれる。バッテリ充電のために、このユニットは取り外し可能だ。つまり、この大きさならドアが付けられるわけで、他にも応用できそうだ。

ところで、もっとも重要な携行品である「水」がフレームに収納できていない。そこで、フレームのハイドレーション・タンク化はどうだろう。フレームに繋がるチューブをくわえて水を飲むわけだ。魔法瓶構造にして、保冷性も欲しいところ。もっとも、注水や排水、そして洗浄の仕組みが難しいかもしれない。ともあれ、ライド装備のミニマル化のために、フレーム内部の偉大なる虚無空間の活用を考えたい。

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