この連載は「首都圏独自のサイクルライフを探る」をテーマにしているが、今回は番外編「自転車を弾く」をお届けする。自転車を楽器に見立てて音楽を作ってみた。もともと連載名「Urban Pedals」は、バンド名をつけるような気持ちで名付けた。音楽性は「インディーロック、シティポップ、またはエレクトロニカなど、都会のエネルギーや洗練された感覚を表現する音楽」と仮定していたのだが(連載第一回参照)、果たしてどんな音なのか、鳴らしてみたくなったのだ。
自転車を演奏する
ある時、何気なくスポークを指で弾いてみたところ、思いがけずよい響きがした。ほかにドラムスティックで叩いたり、スポークを弦に見立てピックで弾いてみたりして、これは実際に「楽器として弾く」ことができるのではと考えた。
自転車で、叩いたり、弾いたりで楽器となり得そうな部分は、タイヤ、スポーク、フレームだ。タイヤは空気を幾分抜いて程よいバスドラ感が出るよう調整した。
スポークは、張られている箇所によって音程が異なる。おそらくはスポークのテンションによってピッチが変わっているのだろう。テンションを変えることで、より精緻に音程を出せるのではないかと考え、自転車ショップにスポークレンチを購入しに行った。「スポークのテンションを変えることで音程を変えたいのです」という謎の質問に対しても店員の方は真摯に答えてくれた。スポークレンチは3種類ほど販売されていたが、サイズとニップルの材質に合ったものを選ばないと、ニップルが潰れてしまい、最悪スポーク交換になるとのことだった。また、テンションを変えることが乗車にどう影響するのか考慮もしておらず、ちょっと軽く試すにはリスクもあるので「テンション調整でスポークに音階をもたせること」は見送ることにした。
フレームは、クロモリフレームについては、どこかベルのようなカン、カンと乾いたよい響きがする。一方でカーボンフレームはコン、コンと倍音が少なく平板に聞こえた。
弾いた音を編集する
いくつか音源を収録した。これらの音を音楽として成り立たせるため、DAW(Logic Pro)上で編集した。
・タイヤ:バスドラ
・サドル:スネア
・シフトワイヤー+フレーム:ハイハット
・スポーク:ギター的な音色
といった具合だ。といってもそのままの音色では、ボコボコ、カンカンと生の音すぎるので、イコライザーやリバーブをかけるなど、最低限、音楽に寄せる加工はしている。また、スポークの音色にはアンプシミュレーターを挟むことでギター風の音になった。
実際に音を録るまでにはいかなかったが、リアブレーキのケーブルも楽器としてのポテンシャルがある。トップチューブに沿って張っているケーブルを弦に見立て実際に弾いたところ、ブレーキレバーの握り具合によってテンションが変わり、音程も変わるのだ。ただし音を拾うのは難しそうだ。ケーブルを金属の線と考えると、エレクトリックギター用のピックアップを応用できるかもしれない。

では聴いてください
実際に制作した音がこちら。思いのほかタイヤのバスドラ音はキック感が出せた。スポークを弾く音もアンプシミュレーター+ディストーションでノイジーなギターを思わせる音になった。「シティポップ、またはエレクトロニカ」感はまるでないが、インディーロックぽさはあるように思う。20秒ほどの作品だが曲名を「Tuned spokes, Bending skies」と名付けた。今回は実験的に取り組んでみたが、音響部分含めより深堀りしていきたい。
初期衝動(死語?)溢れる演奏で最高でした!いいですね〜ここ最近で一番ドキドキウハウハしました。
ありがとうございます!まさに初期衝動のままに自転車たちが「せーの!」で出した音、みたいなのをイメージして作りました。