Visions in Motion 15:重力

自転車に乗るためには、言わずもがな重力を意識する。足を離せば右へ左へよろめき、曲がるときには遠心力と身体のバランス感覚が無意識に作用する。上り坂はよりペダルにかかる負荷を感じ、下り坂では自重による加速をブレーキで制御する。

一枚の紙にも重力を意識する瞬間がある。フライヤーを手に取れば紙はたわみ、書かれている文字組は上から下へ、横書きならば左から右へ視線を誘う。ここで、最近作った印刷物を例に挙げてみる。

フライヤー:A案
フライヤー:B案

上下方向にそれぞれ写真をトリミングしてみると、裁ち落とされたその先を想像するように脳が意識を傾ける。また、写真同士を中心から配置すると安定感を与える。中心から回転するかのように、他の文字を散りばめ、重力から解き放たれるように浮遊感を伴う配置にした。

フライヤー:グリッド

レイアウトには表裏共通のグリッドを用いており、A/B案はどちらも採用されることになった。荒く削り磨いた豊かな石の色と質感(光と影:白と黒)、調和と対称性、石彫の物質性とアルファベット(H/M/N)の形の近似性、これらが渾然一体となって紙片に宿る。

フライヤー:裏面

日常の些細なことにとどまらず、地球は太陽を周回し、月は地球を周回する。地球が中心に向かって物体を引っ張り、自転によって地球上の物体が外に引っ張られ、遠心力と引力の絶妙な均衡を保っている。赤道上の重力は北極や南極よりも約0.5%小さくなり、例えるなら北海道と沖縄では、100kgの物体に対し、約140g程度の差が出るそうだ。

重力は日常生活から宇宙の運行に至るまで、不可欠な力として作用している。

国土交通省国土地理院

展覧会情報
Homage to MINORU NIIZUMA  

Event:トークショー「彫刻案内」
酒井忠康(美術評論家)・水沢勉(美術評論家) 
629日(土)14:00–16:00(13:30〜開場)
会場:人間塾2階
申込:先着80名(事前予約)
イベント参加:無料

Information
会期:2024年3月1日(金)–12月21日(土)
時間:13時〜:木・金・土曜日(完全予約制)
鑑賞ツアー:一般1,500円/大高生1,000円 

予約・お問い合せ

せきがはら人間村生活美術館
岐阜県不破郡関ケ原町2067番地 

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