ナショナル・サイクル・ルートたる所以を探る富山湾岸サイクリング・コース2日間の実走。暴風雨に見舞われた前日の西側コースに対して、翌日は抜けるような青空のもとで東側ルートに挑む。こちらはサイクル・トレインがあるので利用しない手はない。東富山駅から乗車、入善駅で下車してサイクリング開始。東側ルートの始点である県境で折り返し、東富山に戻るべく湾岸を走り抜けた。
サイクル・トレインは一部の土日しか運行しておらず、しかも1日に1便で片道のみ、5日前までに予約が必要で、最大20人(自転車20台)、特別料金1,000円と少々堅苦しい。それもそのはず、自転車固定器具を備える専用車両で、一般客は利用できない念の入れようだからだ。最大限の安全配慮とは言え、しかしもっとライトウェイトで良いはず。また、任意の駅での下車や、県境近くまでの運行も希望したい。
ともあれ、車内は快適で、自転車の固定も簡単で安定している。休日ながら2両編成での全乗客は僅か3名。収益性と持続性を心配しつつも、車両ごとに貸切状態なのでのんびりできる。車窓からは緑麗しい田園風景や雪が残る雄大な立山連峰が流れていく。沿線の観光スポットやサイクリング情報がアナウンスされるのも楽しい。本来は40kmの区間ながら、折り返しを含めて50分かけて到着する。
入善駅を降りると、まずは東に向かって田舎道を邁進。こちらも青いナビゲータ・ラインがあり、路面状況は良好。交通量も少ない。途中から海岸沿いに入ると海原に心が躍る。ただ、防波堤のコンクリート道路は振動が多いのが難点。さらに向かい風だったので、体力を消耗する。そのような訳で意外に時間がかかって県境の東側ルート始点に到達。お昼はこの地域の名物「たら汁」をいただく。
往路は追い風となり、ペダルを軽く漕ぐだけで高速な走行になる。30km/hほどで無風状態になるのが快感。これぞサイクリングの醍醐味、風に乗って風とともに地球を回る。打ち寄せる波と彼方に見える対岸の街、あるいは雑木林の先に白い雪が輝く山々、といった具合に壮大な風景が広がる。澄んだ空気と相まって視力が良くなった気がする。この季節に発生する蜃気楼が見えなかったのは残念。
例によって時には曲がり角を見落としながらも、青いラインを追いかけて軽快にペダルを漕ぎ続ける。多くは防波堤道路や防砂林道、そして歩行者と自転車の専用道路なので安心して走ることができる。一般道路に出ることがあるものの、交通量はあまりない。出会う人も少ないので、本当に休日なのか怪しくなる。ただ、道の駅や観光施設では駐車場は満車で、多くの人で賑わっているのが不思議。
欲を言えば、防波堤や防砂林の内側ではなく、海のそばに自転車道があって欲しい。海が見えそうで見えないのは、もどかしい気持ちになる。さらに我が儘を言えば、同じような風景に次第に飽きが来たのも事実だ。それだけにホタルイカ仕様の漁船を見かけたり、古びた町屋通りを抜けるのは楽しい。サイクリング・コースは隔離道路ではなく、自然や日常の中でこそ活き活きと走れることに気づく。
このようにして富山湾岸サイクリング・コースの東側ルートをほぼ完走することができた。西側ルート同様に自転車の走行環境としては申し分なく素晴らしい。一方でゴールデン・ウィーク真っ只中に、人やクルマが少ないことに驚かされる。同じナショナル・サイクル・ルートでも、ビワイチの過密道路とは雲泥の差だ。富山湾岸の静穏さと快適さこそが至宝の魅力だろう。