富山湾の円弧を巡る(1)富山湾岸サイクリング・コース、西側ルート

2019年に制定されたナショナル・サイクル・ルートは「日本を代表し、世界に誇りうるサイクリングルート」で、現在6つのコースが指定されている。そのうち今回は富山湾岸サイクリング・コースを実際に走ってみた。実のところ、富山と言えば立山連峰や海産物を連想するだけで、自転車のイメージはなかった。それではこれは実際に出かけて実走するしかないと思い立ったわけだ。

そこで4月の下旬、知人のクルマに自転車2台を積み込んで出発。この日は富山市への移動の後、軽く市内散策するだけにした。多少なら自転車に乗る時間はあったものの、市内中心部の交通量の多さと自転車レーンの狭さに尻込みしていた。それでも日本での先駆となった自転車シェアリングが今でも活躍している様子が見て取れたし、その日の宿のオーナーがユニークな自転車屋さんだったのも良かった。

翌日、早朝に高岡市に移動して、現地在住の知人サイクリスト3人と合流。彼らの案内で富山湾岸サイクリング・コース全長102kmのうち、西側ルートを走る。まずは雨晴海岸を出発して南東へ。生憎の曇り空で風も強かったが、晴れていれば海越しに立山を臨む絶景サイクリングになるそうだ。やがで港湾地帯に入り、船舶や倉庫、海鮮市場などウォーターフロント情緒にひたりながら走る。

サイクリング・コースは路側帯にナビゲータ・ラインが引かれている。連続する実線ではなく、数メートルごとの青い破線ながら、視認性は十分に良い。ただ、曲がり角手前に描かれる矢印は小さく見落としがち。しまなみ海道でも感じたように、間違ったところに大きくバツ印を描くといったフェイル・セーフが欲しい。なお、赤茶けた路面や摩耗したラインは冬の雪対策の弊害らしく、その苦労がしのばれる。

海洋丸の公園に立ち寄った後、次は優美な新湊大橋。自転車とともにエレベータで50mほど上昇、自転車を押して480mの橋桁通路を歩いて渡る。これもサイクリング・コースの一部だから面白い。そしてここからは知人推薦の拡張ルートを辿ることになる。まず橋を渡ったたもとから、港を展望しながら渡船で元へ戻る。橋も船も晴れていれば爽快だろが、薄暗く強風に煽られるのは異様な迫力がある。

次いで降り始めた雨の中を内川沿いに走る。小さな橋や小舟がところ狭しと連なる風景は、確かに日本のヴェニスと呼ぶにふさわしい。ただ、自動車が走ったり駐車したりしているのは興醒め。ヴェニスやオスロに倣って自動車を排除して欲しい。その後は雨が強くなり、予定を変更して出発地点へ戻る。雨晴(あまはらし)という縁起の良い名前に反して暴風雨となり、テント泊を中止せざるを得なかった。

以上のように富山湾岸サイクリング・コースの西側ルートは部分的な走行となった。港湾部を含めて交通量は少なく、自転車の走行や整備などの環境も整っている。これらは随分以前から整備が進められたそうで、ナショナル・サイクル・ルートにふさわしい絶え間ない努力が窺える。晴れた日であれば雄大な景色を眺めながら、そして美食を堪能しながら、極上のライドになるに違いない。

一方、東側ルートのようなサイクル・トレインがないのは残念。富山と氷見の間はJRで輪行可能だが、その先の鉄路はないので、必ず往復しなければならない。そこで、西側ルートの始端である県境までサイクル・バスを走らせてはどうだろうか? そこからは左手に海を、前方に山々を見渡しながら富山市に向かって走ることになる。北風が多いそうなので、追い風になるのも好都合だろう。

なお、内川の後は富山・中央サイクリングロード(旧加越能鉄道加越線の廃線跡)が予定されていた。のどかな田舎風景が続く穴場コースと言う。他にも田園サイクリング・コースとして全長199kmのルートや、湾岸と田園を結ぶ連絡コース18kmも富山県によって制定されている。富山湾岸102kmだけでなく、広大な富山平野を縦横無尽に駆け抜けるサイクリングが楽しめそうだ。

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