[ESSAY] 貸自転車ショートストーリー (13)

シェア自転車は世界に広がり、遅ればせながら日本でも定着しつつある……。

一口にシェア自転車といっても、国情や発展形態により、大別すれば世界に4通りのタイプがある。主な違いは、ポート(駐輪場)と操作システムにある。

A.「フランス・ヴェリブ式」
操作パネルを備えたポート(駐輪場)が必要。初期投資大きい。公営向き。日米欧で実施。

B.「中国・スマホ式」
ポート不要。操作パネルはポートと分離して自転車本体に。投資小さい。民営向き。中国に多い。

C.「日本・NTTドコモ式」
ポート必要。操作パネルは自転車本体。AとBの折衷的性格のため投資は比較的小さい。日本の公営・民営で実施。

D.「従来のレンタサイクル式」
ポート1~2カ所。一般仕様の自転車使用。投資小さい。観光地の小規模民営が多い。

更なる発展と定着のためには、多くの問題がある。今回は“採算と使途”について記述する。

━採算は。

どの方式も、ほとんどが赤字。

A. パリ市では、ヴェリブ1台あたりコストが40~50万円掛かり、補助金年間20億円投入。

B. 中国では、過大投資により倒産や赤字会社が続出。最大手モバイクの18年決算▲750億円。

C. ドコモバイクシェアの18年度決算、売上14.3億円(前年比150%)、純利益▲6億円(前年比▲136%)。売上原価15.6億円は売上を上回る。売上伸長でも収益悪化。

D. 副業的形態なら収益性ある。

因みに国交省の想定費用は、初期導入費1ポート550万円、維持管理費1台あたり年10万円。収入は、利用料と広告料など。

公共性から利用料をパリ並の低額にすると、稼働率50%以下では10年後も赤字、80%以上で収益化可能とする。

結論は、「シェア自転車は儲かるビジネスではない」といえよう。公営は補助金で維持されるが、民営では黒字化の道は険しく、破綻した例も多い。

ただ赤字であっても、巨大ITプラットフォーマーは、位置情報などの収集データを消費者囲い込みに使うため採算度外視。収益化につながるかは未知数である。

いずれにしろ「シェア自転車とは何か」、問われる時期である。

━使途は。

世界のシェア自転車は、観光利用を含めて、大都市の公共交通と定義付けられている。そのため規模が桁外れに大きい。

(日本は16年以降急増)

しかし使途を、都市交通だけでなく、レジャー・スポーツ用に広げれば、サイクルツーリズムと相まって、利用者は一段と増加する。

現状では、ポート設置は都市部に限られるが、観光地に広がれば、設置コストが安く便宜性が増す。

車種も、ミニサイクルからスポーツモデルへと拡大すれば、万人向きの汎用性は薄れるが、満足度は増す。

公共のための補助金助成に問題が生じ、コストも高くなるが、利用料を上げられる。工夫次第で収益化の道が見つかるはずだ。

━そこでシェア自転車先進都市である、石川・金沢の「まちのり」の現状を調べてみた。

2012年、2か月間の実証実験を踏まえて、都市公共交通・脱マイカーとして、ヴェリブ式でスタートした。

自転車は一般用20インチ3段変速付きミニサイクル。錠前を前かごに装備。最近は電動車を追加、スポーツ車はない。

ポートはヴェリブ式、ICカードかパスワードで精算する。

現在、ポートは無人18ヵ所から3カ所増加、事務局でも扱う。自転車155台。料金は安い。(1日200円・1カ月1.000円、30分まで無料・以降30分毎200円)

(ポートに並ぶ自転車:写真は金沢観光協会HPより)

事業スキームは、金沢市がポート・端末機・自転車を民間業者に貸与。業者は自転車・機器類の運営や保守、付帯事業で収入を得る。

市の初期投資額は1.1億円、業者の赤字は市が補填する仕組み。

開始後7年の利用者は年間6~7万人。市民10%、大半は県外観光客。男性60%。

ホテルなどとの連携により利便性が増し、北陸幹線開業も手伝い人気は高い。ベビーカー貸出やイベントなど付帯収入を増やす努力もしている。

だが、現状では採算が厳しく、改善の道は見通せていない。

雪国のため冬季需要が減り、損耗も激しく自転車全台入替え3年に1回。すでに2回実施、収益性向上のハンデは大きい。

多くの問題はあるが、観光やスポーツ需要にもっと焦点をあてた戦略をとれば、次の展開が見えてくると思うのだが……。

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