羽島マンハッタン構想

羽島マンハッタン構想は、羽島市をニューヨークのマンハッタンになぞらえて、同地域での自転車活用を考える有志の活動。この地は自転車に適した諸条件を備えているが、実際には十分には活用されていない。そこで、従来より交流があった羽島のまちづくり関係者とIAMASとが、自転車による地域振興の可能性の検討を始めた。もっとも、具体的な活動が始まって1年にも満たず、暗中模索というのが現状だ。

地方小都市が世界最先端の大都市を参考にするのは無茶だが、これには理由がある。羽島は東西を木曽川と長良川、そして北を境川に囲まれている。マンハッタンも同じく東西をイースト川とハドソン川、北をハーレム川に囲まれている。つまり、どちらも川に囲まれた三角形であり、面積もほぼ同じ(羽島53.66 km²、マンハッタン59.47 km2)なのが発想の発端だった。認知的にとても良く似ている。

マンハッタンと言えば、交通渋滞の中を疾走するメッセンジャーを連想し、過酷で危険だと思うかもしれない。だが、それがすべてではない。マンハッタン島の川沿いにはマンハッタン・ウォーターフロント・グリーンウェイが整備されている。全周約51kmもの自転車と歩行者の専用道路だ。道幅が狭い区間もあるが、大半は安全で快適。お薦めは南西部で、摩天楼を見ながら川岸を走るのは爽快だ。

一方、羽島も川沿いに自転車道が整備されている。これは長良川と堤防道路の間の河川敷にあり、舗装の状態も良く快適だ。ただし、全域ではなく途切れ途切れであるのが残念。また、木曽川南部や境川沿いは車道で、交通量が多いところもある。そこで、川沿いの全域に自転車道または自転車レーンを整備すれば、名実ともに羽島をマンハッタン化できるわけだ。自転車道としては、との前置き付きで。

この羽島グリーンウェイもマンハッタンと同じく全周50kmほどになるだろう。これは休日サイクリングに適した距離であり、初心者なら半周コースも考えられる。走り足りない人は、南端から背割堤に入れば良い。これは往復で20km。いずれも川沿いの起伏のない地形なので、滑るように快適に走れること請け合い。見渡す限り川が続く、穏やかで雄大な景色も楽しめる。今となっては珍しい渡船にも乗れる。

さらには、大規模自転車道の長良川自転車道や長良川清流自転車道、そしてツアー・オブ・ジャパンの開催地であり、自転車振興に熱心な美濃市やいなべ市へと繋ぐこともできる。坂バカ諸氏には二ノ瀬峠や飛騨高山が待っている。山岳部では夏に涼しく、河口に近いあたりは冬も温暖と、季節的なアレンジも考えられる。もっとも、大規模自転車道も一部が未完成であるのが残念。

また、羽島には新幹線の岐阜羽島駅があるのが、遠方のサイクリストにとってはポイントが高い。自転車を新幹線で輪行すれば、東京からは2時間で、大阪からは1時間で着く。駅から長良川沿いの自転車道まで僅か数百メートルだ。駅に工具やシャワー・ルームがあれば更に良い。実は、駅のすぐ近くにホテル用の天然温泉があるので、ここをサイクル・ステーションとして活用して欲しいところ。

セントラル・パークやグリーンウェイを自転車で走るのは、スノッブで喧騒的な大都会のイメージとは全く違う、開放的で新鮮な体験だ。9.11以降は警備強化と再開発で、かつては危険と言われたハーレム付近も安全に走れる。ただ、自動車が危険なのは相変わらず。そう言えば、羽島大橋から眺める市街地は、規模は100分の1だけれど、ブルックリン橋から見る摩天楼街に似ている。

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