あらゆるスポーツと同様に「水」はサイクリングの必需品だ。常に移動する自転車では、そのフレームにボトル・ケージを取り付け、ドリンク・ボトルを差すのが一般的。ミニマリズムを追求するサイクリングとは言え、省略できないのがボトルであり、それほど重要な役割を担っている。そして夏場なら、冷たい水が望まれる。生ぬい水は不快だし、暑さが軽減されないので、過剰に水分を摂取してしまうからだ。
そこで、保冷効果のあるボトルが人気を博している。ただし、写真(1)のような断熱材入りのプラスティックの保冷効果はそれなりだ。大量に入れた氷も炎天下では2〜3時間で解けて水が生ぬくなる。断熱材は多少の効果はあるものの、過剰に期待しないほうが良い。ナイよりはマシといった程度。ただ、このタイプは軽量であり、柔らかいので持ち易く、すぐに飲めるように飲み口が工夫されている。
一方、魔法瓶型のボトルは、炎天下で数時間経っても氷が残るほどの高い保冷性能を持つ。氷を多く入れ過ぎると、水を飲み干して氷だけが残り、水分補給不能の間抜けな事態に陥いる(実話)。ただ、このタイプはステンレス製で思いのが難点。表面は硬く滑らかなので、グリップ性も劣る。そのような欠点を補って余るほど保冷効果は絶大で、魅力的だ。真夏にいつでも冷たい水で喉を潤せるのだから。
ところで、魔法瓶のトップ・ブランド、性能的にもピカイチなサーモスは、何故か自転車のボトル・ケージ対応製品を出していない。写真(2)の水筒型はボトル・ケージより細身なので、厚手のカバーに入れている。また、マグ型と呼ばれる飲み口は、走行時に飲むには不安定な形状で、水をこぼしがち。他のメーカーではボトル・ケージに適した魔法瓶ボトルもあるが、サーモスに比べると保冷能力が劣っていた。
最適な製品が見つからないでいたところ、Under Armourとサーモスが共同開発したボトルに気がついた。サイクリング用とは銘打っていないが、Beyond 18 oz.なる製品は適切なサイズであった。ボトル・ケージに差して使っているユーザもいる。日本未発売ながら、アメリカのAmazonで発注可能。本体価格が$26.57で日本への輸送費が$6.58。輸送日数も10日ほどで許容範囲だろう。
実際に届いた製品は写真(3)で、目論見通りボトル・ケージにピッタリであった。保冷効果は他のサーモス製品と同等で申し分なく、数時間経っても氷が溶けず冷たさをキープする。これで夏の暑さを内側から跳ね返すことができる。ボタンを押してワンタッチとは言え、蓋の開閉にひと手間かかる。しかし、保冷効果を考えれば密閉構造が必要であり、ストレートな飲み口は流量が多いという利点に繋がっている。
写真(1) キャメルバック / ポディウム アイス 21oz.(シルバー) 実測重量:141g
写真(2) サーモス / JNL-602 (マット・ブラック) 実測重量:284g
写真(3) Under Armour / Beyond 18 oz. Vacuum Insulated Water Bottle 実測重量:345g
余談ながら、写真(4)は知人が台湾から持ち帰ったペットボトル。保冷性はゼロに近いが、ボトル・ケージにピッタリの形状で、飲み口は指一本で開く。これがコンビニで売られているのは素晴らしい。Giantに代表されるように自転車が一大産業である台湾ならでは。日本でも是非発売して欲しい。気軽なライドに最適だし、丘サーファーならぬ岳サイクリストにも人気が出るに違いない。