自転車と放蕩娘 (11) マドリン・ギンズが語る「天命反転」

1日の気温差が激しい4月のライドでは、天気予報やルートをもとに服装の調節を意識する。今回目指したのは養老山(三方山)だ。ハイキングの気温の変化にも注意を払い、晴れた日の早朝、片道2時間半ほどかけて一人出かけた。

水門川、中之江川沿いを南下して牧田川を渡り、養老町を目指す

Google Mapにも表示されているとおり、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、養老天命反転地は臨時休場している。パトカーが巡回して自動車の駐車禁止を呼びかけ、いつもなら賑わう店舗も閉まり閑散としている。この日は登山の規制はなく、養老の滝の上手にある登山口まで辿り着くことができた。

物好きと言われるのを覚悟で、告白しよう。普段は養老天命反転地の借景として見える養老山から、逆に養老天命反転地を眺めてみようと思い立ったのだ。登山口の脇に立つと、辛うじて見える人工の緑色の山二つ。楕円形のフィールド内部から臨む養老山は近くに感じられたが、山の中腹から眺める養老天命反転地は、新緑や時折混じる山桜の淡桃色にすっかり埋もれている。ウグイスの鳴き声が心地よい。

画面中央右よりに人工の緑色の山二つが見えるだろうか
楕円形のフィールド内部から養老山を臨む(2018年撮影)

ふと思い立って出かけたのには、もうひとつの理由がある。荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所が立ち上げた隔週のニューズレター「Distraction Series」に触発されたからだ。「Distraction(気晴らし)」と名づけられた粋な計らいは、山岡信貴監督のドキュメンタリー映画『死なない子供、荒川修作』(2010年)、『WE、マドリン・ギンズ』(2011年)を期限つきで配信する試みだ(2020年6月末まで)。

『WE、マドリン・ギンズ』の冒頭、ギンズが「天命反転」について語る一節がある。

It happens to happen to us, but now consider the architecture open again, we consider and we configure and make it different. If we can make it different, we can make reversible destiny. Getting into automaticity and we can figure it. Something could change for the better. […] “Procedure Architecture” is very very different from any other architecture. Any in the all history. It’s totally new approached architecture. “Procedure Architecture” is based on architectural procedure with named based on mechanism of meaning. So that has a history and has an intention that is own like any other architecture.

手続き的建築によって、私たちはそれらを開き再構成し変えることができるのです。更新することによって天命反転を実現できるのです。惰性に修正を加えることができるのです。よりよい方向に変わるのです。(中略)私たちの建築は建築的手続きに基づいています。それらは“意味のメカニズム”が基点になっています。新しい歴史と意図を持った建築なのです。

山岡信貴(監督)『WE、マドリン・ギンズ』 / WE, Madeline Gins(2011年)

ギンズの韻を踏むような語り口が小気味よい。人間を「意味のメカニズム」そのものと捉え、人間との相互作用で更新され続ける建築を構想した、荒川修作とマドリン・ギンズ。養老天命反転地では、相互作用を「使用法」として提案している。訪れた人が自ら「使用法」を追加することを想定している点に特徴がある。

例えば「楕円形のフィールド」では、「自分がどこにいるか問うこと」「バランスを失ったら立ち位置や種類を確かめること」など、自身の立ち位置を考えさせる「使用法」がある。個々の体験を重視した オープンなシステムに倣い、私も「養老山から養老天命反転地を臨む」体験を付け加えたい。ライドとハイキングの提案を含めて。

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