Sound of Cycling RE:#04 自転車リスニング

”サイクリングを音楽にする”プロジェクト「Sound of Cycling RE」の制作記第4弾。現在、音の制作を進めている。サイクリングの動作をいかに音にプロットしていくかは一番の悩みどころであり挑戦しがいのある領域だ。本稿では、サイクリングという特殊な状況において、音の体験を成立させるリスニング環境について整理していく。

どう聴くのか

室内で聴く場合と違い、サイクリングでの音楽鑑賞は静的なものではない。風・振動・安全配慮が常に介在する中で、どのようなリスニング環境を用意するかは大きな課題だ。イヤホン、ヘッドホン、スピーカーなど各種デバイスがあるがどれが最も適しているだろう。重要なのは、単に「聞こえる/聞こえない」ではなく、身体との距離や外部音との関係、そして安全面である。

まず密閉型のイヤホン、ヘッドホンはNGである。外部音が聞こえないからだ。ではスピーカーはどうだろう。実際に以前の「Sound of Cycling」プロジェクトでは、パソコン用の円柱型スピーカーをドリンクホルダー(サイズぴったり)に入れて音を鳴らしていた。しかし「スピーカーの音が直接耳に入ってくる風切り音に埋もれる」「設置位置が身体から遠く音が拡散する」などの問題があった。ボリュームを上げればよいのでは、と思ってしまうが、自分に十分聞こえるくらいの音量はすでに周囲への迷惑をばら撒くレベルに達する。つまりは音量不足ではなく、リスニング環境が不適合だったのだ。

首にかけるという解決

選択肢として浮かんだのが首からかける方式の「ネックスピーカー」である。基本的にワイヤレスで、装着すると鎖骨あたりから音が聞こえる。もちろん外部音も聞こえる。少なくとも条件面では、サイクリングとの相性は良さそうだ。各種メーカーから多くの製品が販売されているが、コロナ禍を背景に拡がったリモートワークでの使用を打ち出したものが多い印象だ。軽量、マイク付き、会話がよく聞こえる、など利点を謳っている。実際に家電量販店でいくつかの製品を手に取ったところいずれも非常に軽量であった。しかし、一方で軽量スピーカーならではの弱点として低音の迫力のなさがあげられる。

そこで選んだのがソニーのネックスピーカー「SRS-NS7」。すでに生産完了品ではあるがまだ市場にはいくらか出回っていたので購入した。製品サイトには「長時間の映画やライブ動画視聴も快適です」とある。低音の再生は申し分ない(ただし重い)。動画鑑賞用の普段遣いでも活躍しそうである。

自転車の首(?)に置いてみた。これはこれでかっこいいデバイスのようにも見える

音楽を聴きながら自転車に乗ってよいのか

ところで自転車の取り締まり強化が世間的にも話題になっている。2026年4月1日から、全国的に「自転車の青切符導入」が予定されており、それに伴い違反取締りの強化が進められる。運転中のスマホ使用や信号無視、逆走、無灯火など、取り締まりの強化が大歓迎な内容も多いが、その中に「イヤホンをしながらの運転、傘を差しながらの運転の禁止」という項目がある。外部の音が聞こえなくなるタイプのイヤホンは、原則として問題視されるだろう。では、耳を塞がないタイプのものはどうなのだろう?

このあたり、実際には、イヤホン装着が一律に禁止されるわけではなく、外部音が聞こえるかどうかが判断基準とされている。以下は、警察庁交通局による「自転車を安全・安心に利用するためにー自転車への交通反則通告制度(青切符)の導入ー【自転車ルールブック】」(令和7年9月)内の記載である。

ただし、イヤホンを片耳のみに装着しているときや、オープンイヤー型イヤホンや骨伝導型イヤホンのように、装着時に利用者の耳を完全には塞がないものについては、安全な運転に必要な音又は声が聞こえる限りにおいて、違反にはなりません。

【自転車ルールブック】

ネックスピーカーを使ってみる

実際にネックスピーカーを装着して走ってみた。サイクリングでの使用は想定されていないであろうが、多少の運動では首から落ちる気配はない。首をかしげるとスピーカーと耳との距離が離れるが、そこでの音の遠近が意外と音像の変化につながる。ある程度ボリュームを上げると、「これ盛大に外に音漏れしてるのでは?」という音量になるが、外して確認すると多少の音漏れはあるものの、それほど大きくはない。外部音が遮断されることもなく、最近の静かなEV車の接近も気づく。まだプロトタイプの音源での実験段階だが、サイクリングの音楽を体験するデバイスとしてはよいチョイスではないかと思う。

余談ながら、夏場は首にひっかける部分(ラバー製)が汗だくになる恐れがあるので何か策が必要になりそうだ。

質感はなかなかよい

Sound of Cycling RE進捗

Android端末(Pixel 8)やネックスピーカーなど無事ハードウェアは揃ってきた。この環境を前提に音作りを詰めている。次回あたり実際の音をお届けできればと思う。

開発中のアプリ画面。デバッグ用にて調整ポイントはすべて画面上に出している

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