我々が目にする文字、その形、配置、雰囲気について考えてみる。具体例として「集まる」「流れる」「透ける」「連なる」「滲む」文字のあしらいを振り返る。
集まる文字
岩瀬崇の「ことばの途上」あわ居(2021)では、折りたたまれた表紙カバーの背面に書籍の全文(約4万字)が一望できるよう配置されている。文字サイズは1.5mmで、かろうじて読める程度だ。黒背景に白抜き文字の仕様は、印刷された紙の物質感を離れ、テクスチャーのようなものを生み出している。
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流れる文字
岩瀬崇の「ことばの共同体」あわ居(2023)では、透明のスリーブケースをスライドすると、表紙タイトルが横に流れて浮かび上がる。このケースと書籍の隙間が左右の視差と関連し、認知を揺さぶる。
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透ける文字
大西暢夫の「お蚕さんから糸と綿と」春日森の文化博物館(2023)では、厚さ0.05mmの薄い用紙を用いた両面刷りのフライヤーとなっている。手に取って持ち上げると、黒い背景に抜かれたタイトルが裏面からも透けて見える。絹のような繊細な軽やかさを表現している。
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連なる文字
柴田慶子の「言葉が見せる風景」春日森の文化博物館(2023)では、村人の語りを一字一字、可読ギリギリの間隔で繋いでいる。文字がイメージと重なり、記憶の風化によって時間と共に同化していく様子を感じさせる。
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滲む文字
岐阜おおがきビエンナーレ「Cracks of Daily Life/日々の裂け目」IAMAS(2015)では、タイトルの上部半分が滲んでいる。これは写真の素材感や距離感と調和する曖昧で不確実な表現を試みている。
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こうして併記してみると、文字の独特な動きや配置などのあしらいがもたらす表現が、雰囲気や感情を喚起するメッセージを強化する手段となっていることがわかる。