Visions in Motion 11:洞窟探検

左半身を下にし、30センチほど進むとコンダクターからは仰向けになるよう指示された。下腹部に蠢く何かを感じながら、LEDに照らされる洞窟の中を右へ左へ慎重に進んでいく様子がモニター越しの映像から確認する。

70〜80センチほど進んだ頃、ようやくコンダクターは終点を告げる。この間15分ほどが経過し、ここから来た道をゆっくり引き返すと言う。ポリープの探索はここから始まる。そう、これは病室のベッドで横たわり大腸内視鏡検査を体験している様子だ。

DALL·E:イメージ

点滴による鎮静剤を打つ準備はしたものの、人生初めての体験を朦朧とした意識ではなく、くまなく味わいたいと腹をくくった。日々の食生活を内省するには良い機会だ。

コンダクターと前述したのは内視鏡を操る医師のことで、特殊なマニピュレーターを駆使する。直径10ミリほどのカメラ付きの管先を、患者の負担が少ないように繊細なコントロールすることは、さぞかし神経を研ぎ澄ましていることだろう。

DALL·E:イメージ

拡大率を変えながら、4ミリから8ミリ程度のポリープを見つけ、管より伸びたワイヤーに絡ませて切除する。これをリアルタイムに見ているが大腸の痛みはなく、他人事のように思えてならない。時折り膨らむ下腹部の感触から我が身に起きていることだと自覚する。

映画「ミクロの決死圏」を思い出しながら、暗く狭く襞と突起のある洞窟を探検するクルーになったようだ。自身の身体とはいえ、未知との遭遇は興味深いものである。

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