BMXグラフィティ(8)都市への探索篇

今までの連載では、キャンバスの素材による印象、トリミング、紙の歪みなどに焦点を当ててきた。だが、最終的な作品では、これら全てを取り払いストリートに出た。

ストリートに出た理由は室内ではなく都市空間で行うことによって得られる体験や感覚に着目したためだ。画像を比べて見るとわかりやすいと思うが、室内では、紙が敷かれただけで、トリックを実行するモチベーションが湧きにくい問題がある。しかし、都市空間では、路面の状態や設置物、さらには気象条件など、外部環境が作品に与える影響も無視できない。右の画像は雨が降った直後なので、このような場合は、濡れてない地面を探す必要がある。場所や社会環境との相互作用がもろに反映されるという事だ。

濡れてない地面を探す理由は、室内ではカラーのスプレー缶を用いたが、外で行う際は水のスプレーを用いてトリックを行うからだ。

水のスプレーを用いた理由は複数ある。まず、色の缶スプレーを用いると犯罪になり逮捕されるリスクがある。そして、歴史的な観点から考えても、かつてはキャンバスに描かれた作品しか保存する手段がなかった時代、あるいは写真や映像を上映や雑誌などに載せる事でしか広められず、残せなかった時代があった。それに対して現代では、スマートフォンを使用して簡単に作品を記録し保存することが可能だ。このように考えると水スプレーを用いトリックを行い、蒸発する前にスマートフォンで撮影し記録する方法が相性が良いと判断した。スマートフォンを用いた理由は、トリック時に邪魔にならずトリックが終わり次第瞬時に撮影可能で、撮影時の位置情報も同時に記録できる事だ。そして、すぐ乾き何度もトリックに挑戦できるのもメリットだ。仮にトリックに失敗しても、他の場所を探しに行き別のトリックをする。水が蒸発したら、また戻ってトリックするという事が可能である。

室内と都市空間で描かれた同様のラインに対して、直感的に都市空間のラインの方がより魅力的に感じたのは、BMXと環境との深い関係性を感じ取ったからだ。この直感を深く探求するために、約2000枚の写真を撮影した。

トリックは大垣、岐阜駅、名古屋付近で約2000枚の写真が撮影された。

展示では、1/800の縮尺のサイズの大垣の簡易地図を作り写真を地図上に配置した。これによりトリックが行われた場所の社会的状況との関連性を探求できると考えた。

このような展示によって、鑑賞者はトリックがおこなわれた頻度を視覚的に比較し、手に取って鑑賞し、都市のダイナミクスと文化的特性に関する新たな洞察を得ることができた。

写真を見ると、路面の突起物や暗闇にある影や、さらには気象条件など、外部環境が作品に大きな影響を与えている事がわかる。この感覚は、今までの室内での実践では得られない感覚で、場所や環境との相互作用が面白いと言える。

今回の記事では、室内と都市空間でのアート制作の違いとその魅力についてまとめた。次回の記事では、これまでの探求と撮影した写真に基づいて、より深い考察を行う。

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