2016年10月上旬にアメリカのオレゴン州で自転車調査を行い、3種類の電動アシスト自転車(e-Bike)に乗る機会を得た。日本の複雑で保守的な法規制ゆえにガパラゴス化している国内市場に対して、海外の状況を実際に体験しておきたいと思ったからだ。例えば、オーストラリアStealth社のB-52は最高80km/hまでアシストする。これはもはや自転車ではないが、日本が取り残されている証左でもある。
さて、今回レンタルしたe-Bikeのうち、もっとも高性能であったのがRaleigh社のRoute IE。黒いボディに水色のラインが入り、某チームを連想する鮮やかなマウンテン・バイクだ。そのデザインは、かさばるバッテリーやモータをうまく溶け込ませている。そして、強力なアシストで24kgもの車重は気にならない。その重さが安定感に寄与しているが、階段で持ち上げる時は泣きたくなる。
電動アシストは4段階あって、最小レベルでも軽やかに走ることができる。最高レベルともなれば、40km/hもの巡航速度でも涼しい顔でいられる。一般的なロード・バイクでは軽く漕いで20km/hだから、感覚的には2倍パワーといったところ。急な上り坂となれば速度が落ちるが、メータを見れば20km/hも出ている。40km/hに慣れていると遅く感じるのに苦笑いしてしまう。
同じRaleighのDetour IE Step-Throughは、いわゆるママチャリ・タイプ。こちらも白地に水色のラインが入って爽やかだが、後部荷台の大きなバッテリーが愚鈍な印象を与える。実際には先のRoute IEとバッテリー・サイズの違いがないので、デザインと記憶がなせる技だろう。同じく重量も大差なく23kgほど。一方、モーターの出力は抑えられており、そのおかげで航続距離が長くなっている。
スペック的な違いは体感上も明らかで、Route IEに較べてDetour IEはアシスト力は控えめでマイルドな乗り心地だ。上体を起こした姿勢で、のんびりと周囲を見回しながら走れる。特筆すべきは、ペダリングとアシストの滑らかさで、漕いだ分だけ自然に力が伝わって自転車が進む。これはRoute IEも同様で違和感がない。「アメ車」のように自転車の制御も大味だと思っていたものの、まったくの的外れだった。
EG Bikes社のAthens 250もママチャリ型で、太いフレームとハンドルが上部に飛び出した外見は、ニワトリを連想させる。この自転車はインホイール・モーター型で、後輪の中心部(ハブ)が駆動する。これに対してRaleigh社の2台はクランクの付け根(BB、ボトム・ブラケット)にモーターが仕組まれている。価格はRaleighの半分程度だが、性能は半分ではない。バッテリーの容量も航続距離も少し劣る程度だ。
スペックが違わないのに、価格が半分なのはなぜか? 車体の耐久性や振動吸収性などにも違いがありそうだが、明らかに感じたのはアシストの不快さだった。Raleighの2台は自然な感覚だが、Athensは少し漕ぎ出すと結構なスピードが出てしまう。これでは、日本の電動ママチャリでも問題になるように、急にスピードが出て危険ですらある。明らかな「安かろう悪かろう」であり、スペックでは分からない特徴だ。
ところで、e-Bike専門でない自転車ショップでも、店頭のもっとも目立つところに必ずe-Bikeが置かれていた。それだけショップは力を入れていて、実際にも売れていると聞いた。欧米の自転車ショーでも花形的扱いらしい。モーターとバッテリが目立つ不格好な自転車だけでなく、Faraday Bicycles社やVanmoof社のように、スマートでデザイン性が高い自転車が今後注目されるに違いない。