チェーン・オイルの永続化、輝く黄金のイノテック105

自転車の生命線はチェーン。ペダルを漕ぐ力を車輪に伝えるのだから、これがダメなら、すべてがダメ。キイキイと耳障りな音を立てる自転車は、チェーンのオイル不足か、錆びている。そこまでひどくなくても、汚れたチェーンは漕ぐ力を削いでしまう。チェーンを掃除してオイルを注せば、格段に軽やかに走れる。それに、汚れ錆びたチェーンは恥ずかしいと自覚すべきだろう。

ただ、チェーンの清掃と注油は手間がかかり、頻繁に行なうのは面倒だ。しかし、驚くほど汚れを寄せ付けないチェーン・オイルがある。それがドイツ生まれのイノテック105。清掃は不要で、何ヵ月かおきに軽く注油するだけ。しかも、潤滑性が高いので、ペダルの回転が軽くなる。それほど素晴らしいオイルなら誰もが使いそうだが、実際には普及していない。なぜなら、最初の施工が恐ろしく大変だからだ。

イノテック105(左と中央)、洗浄剤(右)

その最初の施工とは、チェーンの取り外し、脱脂、塗布、乾燥、そして取り付けと6ステップになる。脱脂と塗布には調理器具が必要で、乾燥には何日かかかる。普通の生活環境なら苦情が出ること間違いない。今回はチェーンだけを扱うが、チェーン・リング、スプロケット、プーリーも同様に処理する流儀もある。こうなると、自転車の全駆動部を分解することになり、いかにも大仰だ。

さて最初に、手や床を汚さないように軍手かゴム手袋を嵌め、床には新聞紙をひく。次に、チェーンを自転車から外すために、チェーン・フィクサーでチェーンの一部を弛ませておく。そして、ミッシング・リンクなら、リンク・ツールで外す。そうでなければ、チェーン・カッターでチェーンのピンを押し出す。これを機会に隣のピンも抜いてミッシング・リンク化するのがお薦め。

次に、チェーンを完全脱脂して、イノテック105を金属に直接塗布できるようにする。イノテック105は他のオイルと混じらないので、以前に塗布されたオイルを除去するわけだ。このために、広口の瓶にチェーンと洗浄剤を入れてシェイク。濁りがなくなるまで、洗浄剤を入れ替えてシェイクを繰り返す。綺麗な状態になれば、チェーンに水をかけて洗浄剤を洗い流す。洗浄剤は灯油でも良い。

さらに脱脂を進めるために、フライパンに水を入れてチェーンをひたして、10分間ほど煮沸する。念入りに行うなら重曹(アルカリ性)を入れて煮沸し、終盤にレモン(酸性)の輪切りを入れて中和させる手もある。いずれにせよ、煮沸して湯切りしたチェーンを、今度は水と中性洗剤を入れた瓶でシェイクする。そしてチェーンを水洗いして洗剤を落とす。これで完全脱脂となったはず。

次に、チェーンをフライパンに戻して加熱して、付着する水分を蒸発させる。水分が蒸発しても、さらに加熱を続ける。その傍らで、金属トレイにイノテック105を注いでおく。これはチェーンが完全に浸るだけの量が必要。ここに十分に熱したチェーンを入れる。イノテック105が気化する煙が上がり、チェーンに蒸着して被膜が形成される。チェーンが高温なので、十分に注意すること。

後は、チェーンを適当な場所に垂らして陰干しをする。余分なイノテック105が流れ落ちるので、下に受け皿を置く。最低でも2〜3日かかるが、指でチェーンに触れて油分を感じなくなればOK。そして最後にチェーンを自転車に取り付ける。チェーン・フィクサーで補助しながら、リンク・ツールを使ってミッシング・リンクを連結すれば良い。これで全行程の完了となる。

以上のように、最初にイノテック105を塗布する作業が尋常ではない。一般家庭のキッチンでは理解が得られないだろうから、カセット・コンロを使おう。衛生的にもフライパンや金属トレイはチェーン専用にする。陰干しも迷惑にならない場所を選ばなければならない。しかし、チェーンの回転が驚くほど軽くなり、塵や埃を寄せ付けなくなるのだから、困難を乗り越えて取り組む価値がある。

なお、イノテック105を塗布しても、まったく汚れないわけではない。そこで、2〜3ヵ月に一度は再塗布をする。これは付属の刷毛でイノテック105をチェーンに塗るだけ。浄効果もあるので、多めに塗布すれば汚れが滴り落ちる。しばらく待って、ウェス(ボロ布)で余分を拭き取れば完了。1日くらいは放置して乾燥させるのが良いだろう。このように2回目以降のチェーン清掃は簡単に済む。

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