”サイクリングを音楽にする”プロジェクト「Sound of Cycling RE」の制作記第5弾。音の生成ロジックはおおよそ固まってきた。現在、いかに聴くにたえる音にするかチューニングをしている。本稿では、出音の調整過程について述べる。
音の設計図を描く
あれもこれもと音を重ねていきたいところだが、重ねるほど濁るばかりだ。ここは芯を見据えて鳴らす鳴らさないを決めないと作品の完成は遠のいてしまう。以下は、システムの構成をマインドマップ的に表したもの。

身体の動き(漕ぎ)、環境(速さ)、偶然性(傾きなど)、それぞれが音の材料になっている。これらをロジックに沿って鳴らしていく。実際のペダル(正確にはクランク)回転数を元に、まず素のBPMを算出する。さらにそれを「音楽的」に整えた値を、ここでは Musical BPM と呼んでいる。静止と動作の判定、BPMや速度に応じたフィルターの開き具合も、同時に制御する。これらの要素を組み合わせて、音を鳴らしていく。
これでサイクリングに合わせた音楽ができあがる目論見なのだが……実際鳴らしてみたところ、いかんせん「音がよくない」。音質が悪い、とかではなく、リスニングに向かないというか。音自体は、スマートフォン上でも遅延なく音を生成・加工するための音響エンジンである「Superpowered」を使用しているが、そのままではあまりにシンセサイザー音そのまますぎるのだ。「エコーのまったくかかってないカラオケ」をイメージしてもらうとわかりやすい。普段聴いている音楽がいかに音作りにおいて洗練されているかがよくわかる。ロジックができたあとは、ひたすらこの音作りとパラメーターの調整に時間を費やしている。
想定外に、不穏だった
アプリには録音機能をつけたので、実走行テストでの音源が後からでも聴けるようになった。
サイクリング中に流れる分には問題ないが、あらためて音だけ聴くとなると、なかなかキビシイものがある。ここでは、音楽作品的に、元々のサイクリング時に鳴っている音に若干の加工(イコライザー+順番エディット)を施し、ボーカル(詩の朗読)をかぶせてみた。ボーカルはSUNOで生成した。日本語詩を英訳し、「歌うのではなく、ポエトリーリーディングで」とプロンプトで指示している。それが以下の動画である。
なにやら「不穏な音楽」になってしまった。もっと爽やかな感じをイメージしていたのだが、全然違う。スピードの上昇と音の揺れを同期させているが、無段階で上昇下降するのが不安定な印象=不穏な感じになってしまうのだろう。ただ、ぜんぜん違うがこれはこれでよいかと考えている。一つのサイクリングの表現だからだ。なお、完成版の構想としては、ガチガチに不穏な「HARD」バージョンと、同じロジックで音色だけがらりと差し替えた「Ambient」バージョンを切り替えられるようにするつもりだ。