自転車乗りというのは、かたちに弱い生き物である。
機能よりも先にかたちが来て、かたちに魅了されてから機能やスペックを後付けすることで正当化する。そういう順序で物事を選んでいることを、わたしたち自転車乗りは薄々知っていながら、しかしながら改める気もない。
今回入手したのはピザカッターである。だいたい2,500円ぐらい。ただし、そのかたちはピストバイクだ。黄色いクロモリ風のフレームに、前輪はバトンホイール、後輪はディスクホイール。ドロップハンドルにサドル。ホイールの刃でピザを切る、という仕組みになっている。

テーブルに置いてマルゲリータの前に並べてみる。バジルの緑と生地の焦げ目を背景に、黄と黒の機体が出走を待っている。これだけで、もう元は取れたように感じた。
実際に使ってみるとどうかというと、フレームのトップチューブあたりを握り、指でハンドルを押さえ、ホイールの刃をピザに当てて転がす、というような動作になる。
切れないことはないが、切りやすいかと問われれば、正直に答えるほかない。切りにくい。
ピストというのはそもそも、変速ギアも、競技場で使う際にはブレーキも持たない潔い機構である。それと同じく、このカッターも余計な妥協をしていない。ピザをうまく切れるか切れないかは、あなたの腕次第だ、と言っているようである。