畑を耕しながら

長雨の合間に畑を耕し、野菜の種をまいた。

自転車で軽快に移動するのと比べると、畑を耕すのは重労働だ。少しずつ秋めいて涼しくなってきても、鍬を振るえば汗をかく。自転車のペダルを回すように、鍬で土を掻く反復運動。あらゆる作業は、何かしらの目的に向けた反復運動なのだと得心する。普段は自転車にぷらぷら乗りながら、道路が舗装されていないとか、道がガタガタしているとか、文句の一つや二つをこぼしてしまう。しかし、自分で土を動かしてみると、この道を整備するのも大変な重労働だったのだろうと頭が下がる。

雨が降ると休みになるのは、自転車と同じだ。畑の場合は、水やりの手間も省ける。種をまいたばかりの土が乾いてしまうのが気になって、2〜3日の外泊さえためらうようになった。狩猟型の暮らしから、農耕型の暮らしにスイッチしていくような気がしなくもない。

畑仕事と併せて、「テク農ロジー」というプロジェクトを始めた。農地にメディアアート作品をつくろうという試みで、とあるイノベーションプログラムから支援を受け、アイデアの実現可能性を確かめるための試作と検証に励んでいる。「モビル文学」と同じく、土地とテクノロジーを主題とした試みとして、長く続けていこうと思う。

まずは獣害対策に焦点を当て、夜間に農地へ現れるシカやイノシシを、光によって追い払うことを目指している。獣害対策の装置でありながら、作品にもなり得るものをつくりたい。動物の動きに応じて光が動き、夜の農地に、人間と動物と装置の関係が立ち現れるようなものを考えている。実際に被害を減らせるのかは、これから現場で確かめていく。

農林水産省によると、2024年度の野生鳥獣による農作物被害額は全国で約188億円。そのうちシカが約79億円、イノシシが約45億円を占める。テレビではクマの話題が目につくが、農作物への被害に目を向けると、シカやイノシシの存在も大きい。

背景には、農村の人口減少や高齢化に伴う人間活動の低下、動物の餌場や隠れ場所になる耕作放棄地の増加などがある。人が手を入れなくなった場所に、動物たちの生活圏が広がっている。獣害とは、動物の問題であると同時に、人間の暮らしや土地の使い方が変わってきたことの問題でもあるのだと思う。

AIによってソフトウェアをつくることが容易になりつつある今、小型のコンピュータを現場に置き、その場所で起こることに合わせて動かすことができる。畑の形や、現れる動物、周囲の暮らしに応じた、ごく小さな単位でのサイトスペシフィックなテクノロジーの実装だ。メディアアートが、その土地の暮らしを支えるインフラになっていくのではないかと考えている。

そもそもの興味の芽は、岐阜に住んでいた頃にあった。本ブログを主催する赤松さんの別宅が山の奥深くにあり、しばしば遊びに行っていた。そこで獣が現れる話を聞いたり、近くでジビエ料理を食べたりした。在学中の活動で、クマが出没する山の中を歩いたことも記憶に残っている。野生の獣とは別の話だが、近くには屠畜や食肉加工を担う養老もあった。

あるいは、農業を営む友人の親戚の家に勝手に出入りしているうちに、少しずつ興味を持っていたのだと思う。

スティーブ・ジョブズは、2005年のスタンフォード大学の卒業式で、過去を振り返ることで点と点がつながる、という話をしていた。まさにそんな具合に、制作の息抜きが新しい制作になっている。

現在は家の近くで試作を重ねているが、いずれは各地の農地で試し、国外にも装置を展開していきたい。チャリで小説を書く作品の制作で培った、屋外で機材を動かしたり、地面に光を投射したりする知識と経験を、今度は農地で生かしていく。足りない機材があれば、自転車に乗ってホームセンターへ行く。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です