モンゴル高原でサイクリング

8月中ば、初めてモンゴルに出掛けた。酷暑の日本を抜け出し、涼しい高原で制作研究に勤しむためだ。突き抜ける青い空、漆黒の夜空に輝く星、見渡す限りの緑の草原、緩やかにうねる白い砂丘、そして遠く彼方に円弧を描く地平線。モンゴルにいだいていたイメージはほぼその通りだった。そして遊牧民の放牧とゲル、羊料理やミルク・ティーなども楽しんだ。物見遊山とも言う。

南ゴビ砂漠のホンゴル砂丘

モンゴルで自転車に乗ることは大きな目的だった。これは首都ウランバートルの西約280km、ブルド(Burd)で叶った。ミニゴビ砂漠と呼ばれる乾燥地帯だ。もっとも、借りたのはマウンテン・バイクで、乾いた砂地では無力。タイヤが砂に深く沈み、空回りする。漕ぎ出すこともままならず、なんとか漕ぎ出しても2〜3mも進めば力尽きてしまう。何度も何度も力を振り絞っても、まともに進めない。

ブルド砂丘でのサイクリング

一方、砂丘を取り囲む草原では自転車に難なく乗ることができる。短い草に覆われた礫混じりの地面は、起伏を見て取って進路を選ぶ楽しさがある。真っ直ぐでも右でも左でも、大草原をどのようにでも走れるのは嬉しい。日本ではグラベルでもこれほどの自由さはない。自転車は道を走るものとの先入観があったことに気付かされる。土が固まった轍は、走りやすいものの、面白くないと感じてしまう。

ブルド草原でのサイクリング

ちなみに、観光客がモンゴルで自転車に乗るのは難しいかもしれない。筆者が現地のツアー会社に依頼したところ、ガイドさんと相談してください、という頼りない返事だった。ガイドさんは親切な方ながら、なかなか調達できず、最終日にゲル・キャンプのスタッフが自宅の自転車を運んでくれた次第。賃料は1台30,000NMT(モンゴル・トグログ)、約1,500円だった。

レンタルしたマウンテン・バイク

ただし、都市部では、比較的簡単に自転車が手配できそうだ。ウランバートルではUB BIKEと呼ばれる電動アシスト自転車のシェアリング・システムがあり、Trekショップでマウンテン・バイクを1日単位でレンタルできる。専用の自転車レーンや幅広い歩道が整備されているのは素晴らしい。今回は過密スケジュールで、街で自転車に乗れなかったのが残念無念。

南ゴビの中核都市ダランザドガドの自転車レーン

ちなみに自転車レーンをクルマが潰す悪行はこの国でも同じ。整備された立派な自転車レーンがまともに機能しない。しかも所構わず不法駐車と思われるクルマがひしめいている。後で調べたところでは、社会主義時代に人口40〜60万人の想定であったウランバートルに、現在は170万人以上が住んでいる。しかも個人所有の概念がなかったので、集合住宅には駐車場がない。かくしてソビエト式都市計画が破綻する。

ウランバートル中心部の自転車レーン

さらに自転車に乗る人を見かけることが少ない。これは交通量が多く危険な箇所が多いかららしい。冬は寒さが厳しく雪に覆われるので、自転車に乗れない事情もあるそうだ。市内交通としての鉄道や地下鉄はないので、クルマ依存症になってしまう。それでも子供たちは歓声を上げて自転車を乗り回している。いつでもどこでも彼らは正しい(Kids Are All Right)。

ウランバートルの自転車キッズ

それにしてもウランバートルではクルマの渋滞が酷い。ナンバー・プレートの数字による交通規制が行われているほどだ。しかも近年はロシアの戦争の影響で輸入に頼っている石油が枯渇している。これは都市部でも郊外でも同じで、ガソリン・スタンドごとに何十台もの内燃機関車が並んでいる。前日から待っても、翌日に給油できないこともあるそうだ。それなら自転車に乗ろうよ、と言いたくなる。

ウランバートル郊外で給油を待つ車列(一部)

旧態依然としているのは、草原や砂丘での乗馬体験やラクダ体験も同じだ。物珍しくても乗り心地は悪いし、ノロノロとして爽快感がないからだ。それなら電動アシスト付きのファット・バイクで駆け巡りたい。きっと人気が出るだろう。観光ツアーも進化して多様化して欲しい。そのような自転車を満載したバンを見かけたので、今後きっと盛り上がると期待したい。

マウンテン・バイクを満載したロシア製バン、ブハンカ

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