極楽Zooxでラスベガス散策

アメリカ南西部を巡るFSDの旅から戻った後、ラスベガスで無人運転タクシー、ズークス(Zoox)に乗車した。ZooxはAmazonの子会社で、従来のクルマから一線を画すユニークな自律走行サービスを運用している。そのせんよう車両は運転席もなければハンドルもブレーキもなく、車内は対座式4座の客席のみ。人が運転する想定はゼロ。そして前と後ろの概念さえないユニークで可愛らしいフォルムだ。

Zooxを利用するにはスマートフォンのアプリで乗車地点と降車地点を選ぶだけ。この時は30分後に到着と表示されたので、近くのショップで暇つぶし。ところが、10分もしないうちに間も無く到着との通知。慌てて乗車場所に戻ると、滑るようにアロエ・グリーンの丸いクルマがやって来た。アプリのOpenボタンをタップすると両開きのドアが開く。乗り込めば明るく広い車内に心が弾む。

テスラのFSDと同じように、いや、それ以上にZooxの自動運転は安心感がある。運転席がないから、運転という概念がない。これは御伽の国の馬車だ。御者はAIであり、私たちは(あらかじめ)行き先を伝えるだけで良い。あとは流れる風景を楽しみ、考えごとに耽る。友人や家族と一緒なら、お喋りに興じるだろう。運転は愚の骨頂。あるいは乗馬のような好事家の愉しみになる。

交通量の多い大通りを難なく走り抜ける。大きなガラス窓は能天気なラスベガスを楽しむのにぴったり。やがて目的地に到着。空いた場所を見つけて滑らかに停車する。ドアが左右に開き、颯爽と降り立つ。先程とは違う場所だから、これはまるで、どこでもドアだ。クルマに乗ったという感覚がなく、移動が移動として感じないからだろう。こうして運転は消滅し、クルマは透明化していく。

ただし、現時点のZooxは試験運用の段階だ。だから無料ではあるものの、ラスベガスの中心部の決められた場所でしか乗降できない。つまり、タクシーと言うよりバスに近い。それでもポイントを増やしていけば実用性が上がるし、いずれ任意の場所で乗降できるようになるだろう。テスラのFSDより遥かにZooxに感動した。未来はクルマの所有ではなく利用であり、クルマの偏在ではなく遍在だ。

だからこそ、テスラもロボタクシーに照準を当てている。惜しむらくはサイバーキャブ(CyberCab)がクルマを模倣している。ラスベガスの地下を走るベガス・ループ(Vegas Loop)も既存車だし、無人でもない。ウェイモ(Waymo)に至っては既存車に巨大なLiDARを取り付けたキメラだ。それは単に外観の問題ではなく、未来をいかに志向するかだろう。

ところで、クリティカル・サイクリングで何故に無人運転タクシーの話題かと言えば、クルマは自転車の周辺機器に他ならないからだ。と言う戯言は聞き飽きたかもしれない。しかし、クルマの自動化が進めば進むほど自転車の価値が高まる。馬車の御者という苦役は人間の機械化に他ならない。一方で、自転車を漕ぐことは身体の拡張であり、心の喜びだ。それは人間の最後の拠り所かもしれない。

(最後のシーンでサイバーキャブの前を自転車が横切る)

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です