4月中旬、テスラ(Tesla)の自動運転機能FSD(Full Self-Driving)を使ってアメリカ南西部、いわゆるグランド・サークルを廻った。目的地を設定すれば後はすべてお任せで走行、到着すると空きを見つけて駐車してくれる。もっとも現時点ではSupervised(要監視)なので、居眠りはできない。それでもハンドルから手を離せるし、前方の注視もそれなりで構わない。ほぼ完全な自動運転といって良いだろう。
出発地はラスベガス、意気揚々と2025年式のモデルY(Juniper)に乗り込む。すでに夜で周囲は真っ暗。初めての地で道は皆目分からない。道路法規にも交通標識にも明るくない。慣れない右側走行だし、片道数車線を大型車が高速に行き交う。この状況で運転するには決死の覚悟が要る。目的地を近くのスーパーマーケットにセットして、恐る恐るFSD 14.3をスタートさせる。
クルマが動き出した瞬間は、思わず驚嘆する声が漏れる。四つ角を曲がる、大通りに出る、車線を変える、低速車を追い越す、赤信号で止まる、青信号で動き出す、小道に入る…いずれも完璧な運転。次第に気持ちが落ち着いてくる。もちろん空きスペースを探して自動駐車(オート・パーキング)。そして買い物を済ませればスマートフォンでクルマを呼び寄せる(スマート・サモン)。
当初こそ半信半疑だったものの、すぐに慣れるほど安定していて信頼感がある。目的地を決めれば、後は何もしなくても良い。我々は移動したいのであって、運転したいわけではない。運転という苦役からの解放だ。生成AIのGrokが統合されているので、相談しながら立ち寄り先を決めることもできる。こちらは旅のコンジェルジュ、グランド・キャニオンはどれくらいデカいの?と尋ねてみる。
FSDは人間よりも遥かに安全に運転をする。今回のように慣れない環境なら尚更だ。何しろ8台の車外カメラで全周囲を常に見ていて、500TOPS(1秒間に500兆回の演算)で処理している。人間のように脇見をしないし、ブレーキとアクセルを踏み間違えることもない。実績としてもFSDは人間より7倍安全だとテスラは主張している。さらに自動運転のクルマが増えれば、さらに安全になるに違いない。
FSDの課題も書いておこう。最大の問題はSupervisedなので、人が監視しなければならないことだ。何もしなくて良いのに居眠りができなのは、苦痛に感じることすらある。他には、駐車場所を見つけられずに無限ループしたり、料金清算で立ち往生したりすることがあった。また、経路探索の問題として悪路や遠回りの道を選ぶこともある。これらは頻繁ではないものの、完全(Full)ではない証左だ。
ちなみに今回の走行距離は1,622マイル(約2,610km)であった。これは東京から鹿児島までの往復に相当する。この10分の1だって自分で運転したいとは思わない。そして充電費用は173.56ドル(約27,000円)。サイズが近いトヨタの内燃機関車ハリアーならガソリン代は37,000円近く(燃費12km/L、ガソリン170円/Lで計算)で、高速道路の普通料金は60,000円ほど。合わせて97,000円となる。なんと3.5倍だ。
ところで、クリティカル・サイクリングで何故に自動運転の話題かと言えば、クルマは自転車の周辺機器に他ならないからだ。ロング・ライドで疲れて一休みしているところに迎えに来て欲しい。何より馬鹿な人間とプリウス・ミサイルで死ぬのは嫌だ。だからこその自動運転だ。しかし、帰国して空港から自宅まで運転しなければならなかった。昨日までと同じモデルY(Juniper)なのに。



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