リアルタイムBGMシステム(23)

これまでは、自分が都市で撮影した映像データをアプリに読み込ませ、音の鳴り方を確認していた。撮影し、持ち帰り、自宅で再生する。その手順で十分だと考えていた。しかしある時ふと気づいた。本アプリはApple純正のSwift/SwiftUIで実装している。であれば、そのままiPhone向けにビルドすれば済む話ではないかと。早速Claude Codeに、iPhoneでもビルド可能な形へのチューニングを依頼した。所要時間はわずか5分ほど。問題なくiOS実機で動作する形に修正してくれた。「リアルタイムBGMシステム」というタイトルで毎月記事を執筆していたにもかかわらず、なぜこれまでiOSビルドを試していなかったのか、自分でも不思議に思うほど簡単な工程であった。

そのままiPhoneとシンセサイザーを持ち夜の原宿へ向かった。作業台として適していたのは、シールとグラフィティに覆われた路上変圧器であった。その上にiPhoneとシンセサイザーを設置し、アプリを起動。交差点を横切るタクシーをアプリが認識するたびに、シンセサイザーがリアルタイムで演奏する。

結果は想像を超えるものであった。自宅で録画素材を使っていた段階は、いわば本番環境のシミュレーションに過ぎなかった。画面の中の風景と自分との間には明確な境界があり、街は既に終わった出来事として画面の向こうに固定されていた。 しかし街頭でリアルタイムに音が鳴り始めた瞬間、その関係が変化する。目の前を通過した車両が、その瞬間に音となる。街の出来事と自分のシステムが同じ時間軸の上で動き出すと、シミュレーションと現実の間にあった境界そのものが溶けていく。街そのものが楽器となり、自分はその演奏者になっていた。

一方で、夜の原宿は動くものが少ない。認識対象はほぼタクシーに限られ、歩行者も朝と比較すると著しく少ない状況であった。システムとしては、かなり閑散とした入力環境だったと言えるが最初の実験としては適していたとも言える。仮に状況が朝の通勤時間帯や人混みの多い場所であれば、認識対象が一気に増加し、相当に混雑した演奏になる。場所や時間帯ごとに手動でチューニングを行うのはスマートではない。シーンに応じて自動でチューニングを行う機能が、次の開発課題である。

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