リアディレイラー(RD)を装着し多段ギアを組むことが前提の、エンド(ドロップアウト)形状が(ほぼ)垂直のいわゆる「ストドロ」フレーム。そういうフレームの自転車をわざわざシングルスピード化して乗りたい、というニーズも古くからあり、大きく3通りのアプローチがある。ごく単純に、RDをテンショナーに入れ替えてチェーンを張るアプローチ。スマートなものとしては、偏心(エキセントリック)機構を備えたボトムブラケットや後輪ハブでチェーンを張るアプローチ。そして偶然の巡り合わせに賭ける「マジックギア」アプローチだ。今回の記事では最後の「マジックギア」アプローチを紹介する。
マジックギア以外のこと
ここのところマジックギアを模索していた自転車、GiantのMCMは、1年ほど前に関戸橋のフリマで入手したものだ。仮組み段階ではリアディレイラー装着で1x2s、次にテンショナーで1x2sとして大弛峠越えのサイクリングに出かけ、それからテンショナーなしでディングルスピード(二通りのシングルスピードの組み合わせ)が成立しないかと淡い夢を膨らませた。MCMのデビューをまとめた記事では、「軸間固定ディングルの狭き門」と題し、次のように追記した。
「30/16と26/20でテンショナーなしのディングル」を試してみた。結果は、ギリギリいける感じ。26/20はややタイトながら引っかかりはほぼなかったが、30/16はギチギチで、16Tコグをシングル専用の新品から中古スプロケットをバラしたものに交換したら微かにマシになった。30Tのリングは新品なので、これがいくらか摩耗すればよりよい具合になりそうだ。ただしいずれも継ぎ接ぎの中古品チェーンを使っての話である。
歯数の和が同じになるチェーンリングとコグのセットを2通り用意しても、実際にはリングが大きい方がチェーンは張られた状態になる。どちらの組み合わせでもテンションがキツ過ぎずユル過ぎもしないチェーンステイ≒軸間長(BB~リアハブ)はごく限られている。(中略)MCMでディングルを実現するには、エキセントリック(=偏心)BBを使って軸間長を(中略)変えるなどするのが正攻法といえそうだ。
「エキセントリック(=偏心)BBを使って軸間長を(中略)変え」、それによって「MCMでディングルを実現する」作戦は、件のBBとクランクとの干渉という極めてシンプルな問題により9月初旬に頓挫した。もう一つの頼みの綱は偏心機構を持った後輪ハブだが、こちらもディスクブレーキ対応でフリーコグが組める品はほぼ出回っていないことがわかった。リアディレイラーのところにテンショナーをつける方法はもう試しているので、そこへ戻るのはいつでもできる。残る探求の道は「マジックギア」だけだ。

マジックギアはどこにあるか
偏心系パーツによるアプローチがほぼ無理と確定したMCMは、「ギチギチ」の「30/16」は使わず、「ややタイトながら引っかかりはほぼ[ない]」「26/20」で近所をヒョコヒョコするシングルスピード自転車になっていた(ギア比1.3はめちゃめちゃ軽い)。「継ぎ接ぎの中古品チェーンを使って」いたので、真のマジックギアを探る鍵になる正確なチェーンステイ長はわかっておらず、およそ425mm、くらいの解像度だった。

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意を決してチェーンを新品に交換してみると、それまで程良いテンションが出ていた26/20は、見事にギチギチで使えなくなった。へたったチェーンでもギチギチだった30/16の方のコグを1T小さく(15に)してみると、こちらは外れるほどではないものの、ゆるい。どうやら自分のMCMのチェーンステイは425mmより長く、427.5mmより短いらしい。

これよりもテンションが高くなる組み合わせを、FixMeUp!で算出してもらう(表では相対的に左にある組み合わせ)。手元のチェーンリングとコグの中から36/19を試すと(半コマが必要)、まだ少しゆるい。他のスチールMTBで気に入っているのと同等のギア比(1.89)なのだが、カーボンフレーム&フォークのこの車体ではちょっと踏み応えが足りず、かといってヒョコヒョコ遊び用としては重くて中途半端な感じがした。うーむ。

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テンションをよりよくしようとすると、パーツが一般に流通している組み合わせとしては、34/15(2.27)、36/17(2.12)、38/19(2.0)あたりが候補になる。チェーンリングがいよいよMTBらしくない大きさになっていいなら、39/20=1.95(半コマ使用)と40/21=1.90も視野に入る。30/15の時にギア比は悪くない印象だったので、今度は38/19を試すことにした。結果、テンションはようやく良好といえる範囲に収まってくれた。

だいたいの結論が出た。うちのMCMのチェーンステイは427mmくらいで、マジックギアは38/19やこれと同等または少しだけ上のテンションになる組み合わせのようである。具体的な解が出て、だいぶすっきりした。でもだからといって、「それからはずっと幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし」とはならない。
マジックギアは儚い。パーツの摩耗に伴い、チェーンテンションもまた徐々にゆるくなっていく。コグはサーリーのスチール製なので寿命が長いが、アルミのチェーンリングは(チェーンのかかる頻度がコグの半分とはいえ)先に削れてくるだろう。PCD104で38T以上となると、鉄やステンレスのリングは手に入りそうにない(PCD110などのクランクに交換した方がいいのか?)。チェーンは5-6速向けを入れているのでそこそこ高耐久のはずだ。さてここから、実際どうなっていくだろうか。

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